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4月17日の日本の昔話
  
  
  
  こわいみやげ
 むかしむかし、つる平(へい)さんという人が、ひがんの休みに、お嫁さんの実家へ出かけました。
  「よく来てくれたのう」
   お嫁さんの実家の人は、みんな大よろこびです。
  「おひがんだから、むこどのに、おいしいものをごちそうしよう」
  と、台所で、何かを作っています。
   台所へ、子どもたちが行くと、
  「これこれ、よるんじゃない。おそろしいものだからね」
  「きゃーっ、おそろしいもんだって!」
   子どもたちは、にげて行きました。
   さて、これを聞いていたつる平さんも、なんだかおそろしくなりました。
   しばらくして。
  「さあ、できましたぞ」
  と、つる平さんの前にはこんで来ました。
   けれども、つる平さんはおそろしくてたまりません。
   まっさおな顔をして、ブルブルと、ふるえていました。
  「さあ、たんと作ったから、食べてくださいよ」
   そう言われても、おそろしくて手が出せません。
   出されたものをチラリと見ると、まっ黒な、きみのわるいものがならんでいます。
  「あの、その、・・・わしは、はらが、いっぱいで」
  「そんなら、おじゅうにつめて、おみやげにもって行きなされ」
  と、こわいものをつめたふろしきづつみを、つる平さんの首にゆわえてくれました。
   こわいふろしきづつみを首に、つる平さんは生きた心地がしません。
  「もし、こわいものが食いついてきたらどうしよう。こわいが、せっかくのもらいものを、すてるわけにもいかんし、・・・あっ、いいものがおちている」
   つる平さんは、道におちている長い木のぼうをひろうと、ふろしきづつみをぼうの先の方にゆわえつけて、さわらないようにして歩いて行きました。
  「よし、これならだいじょうぶ」
   安心して歩いて行くと、石につまずいてころびそうになりました。
  「あっ!」
   そのひょうしに、ぼうの先のつつみがすべって、つる平さんの首にペタンとすいついてきました。
  「ひゃあっ、たすけてくれえー!」
   おどろいたつる平さんは、ふろしきつつみをなげだして、家にかけ出しました。
   家にかけこんだつる平さんは、大いそぎで、お嫁さんにこわいおみやげの話をしました。
  「まあまあ、それはきっと、おはぎですよ」
   お嫁さんはそう言うと、つる平さんといっしょに、ふろしきづつみをひろいに出かけました。
   ふろしきづつみはすぐに見つかり、お嫁さんがつつみをひらくと、中からおはぎが出てきました。
  「ほら、やっぱりおはぎですよ。ほら」
   お嫁さんに言われて、つる平さんがそれを見てみると、おはぎのあんこのところがくずれて、中の白いごはんが見えました。
  「あっ、白いきばをむいてる!」
   つる平さんは、まっさおな顔をして、とぶようににげて行ってしまいました。
  「おいしいおはぎが、どうしてこわいのかしら?」
   お嫁さんはふしぎに思いながら、うちへ帰って行きました。
おしまい