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10月4日の日本の昔話
  
  
  
  山の背比べ
 むかしむかし、たくさんの山が、いつもけんかばかりしていました。
  「ぼくのほうが、おまえよりも、ちょっと高いようだな」
  「どうして?」
  「どうしてって、ぼくは、おまえの頭の上の雲の上まで見えるんだもの」
  「ぼくだって見えるさ。もっと、うんと見えるさ。おまえの向こうの山のてっペんだって、ちゃんと見える。そのまた向こうの、そのまたずーっと向こうのてっペんだって、みんなちゃんと見える。だから、もしかするとぼくは、日本じゅうでいちばん高い山かもしれないね」
  「日本じゅうで、いちばんだって?!」
   さあ、それを聞いたたくさんの山は、おこりだしました。
  「よーし、それじゃあ、どれがほんとにいちばん高いか、比べっこしよう」
   さて、いよいよ背比ベをする日がきたのですが、そこで困ったことに気がつきました。
   いったいどうやって、あっちの山とこっちの山と、どっちが高いかを比べたらいいのでしょうか。
   みんな大きな高い山です。
   近くにならべるわけにはいきません。
  「どうしようか?」
   たくさんの山が困っていると、人間たちがいいました。
  「長い長いといをつくって、それを背比ベする山と山のてっペんにのせるんですよ。そうして雨がふってくるのを待つんです。水はいつだって、低いほうに流れていきますからね。雨がふって、といにたまった水が流れてきたほうの山は、負けというわけです」
  「なるほど、それはいい考えだ」
   山たちが賛成しました。
   そこで、山のふもとの人たちは、背比べをする山から山へ長いといをかけました。
   ザアーザアーザアー。
   しばらくすると雨がふってきて、たまった水が流れはじめました。
   あっちからこっちに、そっちからあそこに。
  「やったー! ぼくだ、ぼくがいちばん高い山なんだ。・・・あれ?」
   そういっていると、その山に向かって、向こうのほうから水が流れてきました。
  「ほうら、おまえじゃあない。いちばん高いのは、ぼくなのさ。どうだ。どこからも、ぼくのほうへ流れてくる水はない。バンザーイ!」
   とうとう日本ーの山が決まったと、みんなは思いました。
  が、そのときです。
   ズシーン!
   ものすごい音といっしょに、遠くから飛んできた山がありました。
  「なっ、なんだ、あの大きな山は!」
   おどろく山たちに、その飛んできた山がいいました。
  「ぼくは富士山さ。山の大きさ比べをしていると聞いて、やってきたんだ。どうだい、ぼくより大きい山はいるかい?」
  「・・・・・・」
   背比べしていた山たちは、はずかしくて何も言えませんでした。
   しかし、富士山はどこから飛んできたのでしょうか?
   それは、日本一大きな湖の琵琶湖(びわこ)の辺りで、富士山がジャンプしたときの足跡が、いまの琵琶湖だそうです。