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7月24日の小話
ちょうずをまわせ
   むかし、ある村に、おだいかんさまがやってきました。
  「さあ、どうぞこちらへ」
   しょうやさんは、おだいかんさまを、屋敷へ案内して、ごちそうしました。
   すると、おだいかんさまが、
  「かわや(べんじょ)へいく。ちょうずをまわせ」
  と、いいました。
  「はい、かわやはこちらです」
   しょうやさんは、おだいかんさまを、かわやにあんないしたものの、「ちょうず」というのが何のことか、どんなものなのか、さっぱりわかりません。
   そこで、ものしりのおしょうさんのところに、つかいを出して、「ちょうず」という言葉のいみを、きいてこさせました。
  「わかりました。『ちょうず』とは、長い頭のことだそうです」
   つかいのものがいうと、
  「よし、村で一番長い頭をしたものを、つれてこい」
   しょうやさんがさしずしました。
   おだいかんさまがかわやから出ると、しょうやさんが、長い頭の男をすわらせて、その頭を、りょう手で力いっぱい、まわそうと、うんうんいっています。
  「これ、なにをしておる」
  「ちょうずをまわそうとしておるのですが、なかなかまわりません。うんこらしょ」
  「・・・この村のものは、よくよく、ものをしらんのだな。『ちょうず』とは、手をあらう水のことじゃ。はようもってまいれ」
 おだいかんさまは、ほとほと、あきれはてたそうです。
おしまい