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9月2日の小話

やぶ医者
   向こうから、お医者がやってきました。
   そこへ店のこぞうが、かけてきてぶつかり、医者は、はずみでころんでしまいました。
  「あぶないではないか、これ」
   医者は立ちあがって、こぞうのえり首をつかまえると、手をあげてたたこうとします。
   すると、こぞうが、
  「足でけるのはかまいませんが、手でぶつのだけは、どうか、どうか、ごかんべんください」
  と、いいます。
   医者は、おかしなことをいうものだとおもって、
  「はて、なぜ、そのようなことをいう」
  と、きくと、こぞうは、
「足でけられても、命はなくなりませんが、あなたさまのお手にかかると、助かる者も助からないと、もっぱらのひょうばんですから」
おしまい