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日本のとんち話 第50話
おまけだけの買いもの
千葉県の民話
むかしむかし、あるところに、ともてりこうな男の人がいました。
なんでも売っている大きな店に行き、あちこちにならんでいる品物を手にとってはながめるのですが、買うようすがありません。
それを見ていた店の主人が、がまんできずに言いました。
「何か気に入ったものがありますか? たくさん買ってくれたら、うんとおまけしますよ」
「それはありがたい。では、このわらぞうりを十足買ったら一足まけてくれるかね」
「いいですとも。十足も買っていただけるのでしたら、一足ぐらいおまけしましょう」
「うそじゃないな?」
「もちろん。うそなんか言いません」
男の人はわらぞうりを一足つかむと、今度はざるのおいてあるところへ行きました。
「このざるを十個買ったら、一個まけてくれるかね」
「はい。十個も買ってくださるなら、一つはおまけしましょう」
男の人はざるを一つつかむと、その中へわらぞうりを入れました。
それから今度は、茶わんのならんでいるところへ行きました。
「この茶わん十個買えば、一つまけてくれるかね」
「ええ、十個も買ってくださるなら、一つはおまけしましよう」
男の人は茶わんを一つ、ざるの中へ入れました。
それからおわんにしゃもじと、何でも手あたりしだいに一つずつざるの中へ入れます。
店の主人は、不思議に思ってたずねました。
「どうして、一つずつ入れるのですか?」
「なに、おまけのものから先に入れているのだ」
「でも、今まで買ってもらったのはその十倍です。とても一人では持って帰れませんよ。なんでしたら、店の者に家までとどけさせましょうか?」
すると、男の人は、
「いや、そんな事をしてもらってはもうしわけない」
と、言うなり、品物のいっぱいつまったざるをかついで店を出ました。
「あの、もしもし、お客さん、まだお金をもらっていませんが」
店の主人があわててよびとめると、男の人はすました顔で言いました。
「今日は急ぐから、おまけしてもらったものだけもらうことにする。おまけのものばかりだから、金ははらわなくてもいいだろう」
「へっ? それは、その・・・」
店の主人が首をひねっている間に、男の人はどこかへ行ってしまいました。
おしまい
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