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日本のわらい話 第36話
冗談のお願い
兵庫県の民話
むかしむかし、あるところに、仏さまをいっしょうけんめいおがんでいるおばあさんがいました。
おばあさんは、毎日のようにお寺にお参りして、
「ナムアミダブツ、ナムアミダブツ・・・」
と、おがんでいました。
おばあさんは、もうすっかり年をとっていて、早く極楽(ごくらく→天国)からお迎えがこないか、そればかり考えていました。
「ナムアミダブツ、ナムアミダブツ、もう生きていてもしかたありません。仏さま、どうぞ一日も早く、わたしをお迎えにきてください」
それを聞いていた、お寺の小僧(こぞう)さんは、
(あんなこと言ってるけど、本当に早く死にたいのかどうか。一つためしてやろう)
と、思いました。
そこである日、仏壇(ぶつだん)のうしろにかくれて、おばあさんの来るのを待っていました。
やがておばあさんがやってきて、いつものようにおがみます。
「ナムアミダブツ、ナムアミダブツ、早くわたしを楽にしてください」
そのとたん、小僧さんが言いました。
「よしよし、そんなに言うのなら、明日、いよいよ迎えにきてやろう。極楽へいってゆっくりするがよい」
さあ、それを聞いたおばあさんはビックリです。
「いえいえ、まだ、わたしは生きていとうございます。お迎えにくるのは、うーんとうーんと先にしてください」
おばあさんはたたみにおでこをこすりつけると、何度も何度も頭をさげました。
「まだ死にたくないのなら、なぜそんな事を頼むのじゃ?」
「いえ、その、あれは、ほんの冗談(じょうだん)です。さっきのお願いはとりけしますから、どうぞ長生きさせてください」
小僧さんはおかしくて、笑いたくなるのをジッとがまんしていました。
さて、しばらく不思議そうに仏さまを見ていたおばあさんは、
「この仏さまは、なんてよくわかる仏さんだろう。これじゃ、うかうか、お参りもできないねえ」
と、言いながら、帰っていったという事です。
おしまい
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