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日本の悲しい話 第10話
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お酒の好きな子ザル
広島県の民話
むかしむかし、ある山に、お母さんと子どものサルがすんでいました。
こまった事に子ザルはお酒が大好きで、こっそり人の家にしのびこんでは、お酒をなめていました。
「酒をのむとは、めずらしいサルだ。よし、あのサルをつかまえてやろう」
それを見た猟師(りょうし)は、おけにいっぱい酒を入れて、山のサルの通る道へおきました。
「くんくん。おや、いいにおいがするぞ」
においをかぎつけた子ザルが、おけのところにやってきました。
「わあっ、お酒だ」
子ザルは大喜びで、お母さんのところへ行って言いました。
「あのね、山道にお酒があるよ」
するとお母さんザルは、こわい顔で言いました。
「だめだめ! お前をつかまえようとして、猟師がわざとおいたにちがいない。どんなことがあっても、飲んではいけませんよ!」
でも、お酒の好きな子ザルは、がまんができません。
「一口だけなら、のんでもいい?」
「だめだめ!」
「なめるだけなら、いい?」
「だめだめ!」
「なら、においをかいでもいい?」
あんまりしつこく言うので、お母さんザルは、
「においをかぐぐらいならいいけど、ぜったいに飲んではいけませんよ」
と、言ってしまったのです。
子ザルはすぐにおけのところへ飛んでいって、お酒のにおいをかぎました。
「ああ、いいにおいだ。おいしそうだなー」
においだけと、お母さんザルと約束しましたが、でもにおいだけなんて、とてもがまんができません。
「一口ぐらいなら、いいだろう」
子ザルはお母さんとの約束を忘れて、ゴクリとお酒を飲みました。
「おいしいな。もう一口」
「これでおわりにしよう。もう一口」
「さいごに、もう一口」
「おしまいに、もう一口」
「おまけに、もう一口」
「ぷはーっ、・・・よっぱらっちゃった」
おけのなかのお酒をすっかり飲んでしまった子ザルは、そこへたおれて動けなくなりました。
「しめしめ、うまくいったぞ」
さっきから木の後ろにかくれていた猟師は、たおれている子ザルをひろいあげると、山をおりていきました。
かわいそうに子ザルは、お母さんとの約束を守らなかったために、二度とお母さんのところへもどることができませんでした。
おしまい
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