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日本のふしぎ話 第29話
長生きじいさん
宮城県の民話
むかしむかし、ある村に、とても不思議なおじいさんがいました。
このおじいさんは二メートルもある大男で、たいへんな物知りでした。
何をたずねても、すぐに答えてくれるのです。
おじいさんは自分の家は持たずに、村の大きな家に何日か世話になると、そこを出て、またほかの家に世話になるというくらしをしていました。
近くの村でも、同じように世話になっていました。
おじいさんの好きなことは、白い紙に字を書くことと、源義経(みなもとのよしつね)が活躍(かつやく)した、むかしの合戦(かっせん)の話しを話して聞かせることです。
その話し方がまた上手で、まるでそこに自分がいて、見てきたように話すのです。
自分では年を口にしたことはありませんが、このおじいさんは、だれに対しても自分の子どもを呼ぶように、「せがれ」というのです。
お寺の和尚(おしょう)さんなどは、百七歳まで生きたのに、やはり「せがれ」といわれて、親しくつきあっていました。
ある時、将棋(しょうぎ)をさしていて、おじいさんはふと、
「そうそう、そういえばあの時、正左衛門(しょうざえもん)がな・・・」
と、二百年も前の人の話しを始めたのです。
不思議なおじいさんでしたが、ある年、ポックリと死んでしまいました。
けれども、それから二十年ほどたったある時、村の人が仕事で京の都へ出かけると、そこにはあのおじいさんがいて、いろいろと話をしたというのです。
それからも、あちこちでこのおじいさんを見たという人が現われました。
このおじいさん、もしかすると、まだ生きているのかもしれませんね。
※ むかしから長生きをした人の話は多く、江戸時代の書物には、鳥取県の儀左衛門(ぎざえもん)は1841年(天保12)に二百九才の誕生日をむかえたと書かれていますし、愛知県の満平(まんぺい)は、1796年(寛政8)に百九十四才になったと書かれています。
おしまい
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