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日本のわらい話 第50話
言い負かされたタヌキ
長崎県の民話
むかしむかし、あるところに、やそべえというおじいさんが住んでいました。
とてもゆかいなおじいさんで、
「やそべえさん、こんにちは」
と、声をかけたら、いつだって、
「はい、はい、こんにちは」
と、元気よく返事をします。
小さい子どもが、
「やそべえさん、こんにちは」
と、言っても、
「はい、はい、ぽんぽここんにちは」
と、おもしろい返事をしてくれます。
さて、やそべえさんの家の近くに、一匹のイタズラダヌキがすんでいました。
「おもしろいじじいだ。一つからかってやろう」
そこである晩、タヌキはおじいさんの家に出かけていきました。
おじいさんが寝ていると、
トントントン。
だれか、表の戸をたたくものがあります。
「はて、いまじぶんだれが来たのかな?」
不思議に思って起きていくと、だれやら戸をたたきながら言いました。
「やそべえさん、こんばんは。ぽんぽこ、ぽんぽこ、こんばんは」
(ははん。さてはタヌキのやつだな。よし、負けるものか。タヌキがだまるまで返事をしてやるぞ)
「はい、はい、ぽんぽこ、ぽんぽこ、こんばんは」
タヌキも、それに負けじと、
「やそべえさん、こんばんは。ぽんぽこ、ぽんぽこ、こんばんは」
と、くりかえします。
そのたびに、やそべえも、
「はい、はい、ぽんぽこ、ぽんぽこ、こんばんは」
と、言いかえします。
言い合いは何時間も続きましたが、でも、ここで負けたらおしまいです。
タヌキのよびかけに答えているうちに、だんだん夜が明けてきました。
ところがタヌキのほうも大よわり。やそべえがどこまでも返事をするのでクタクタになり、とうとうだまりこんでしまいました。
「やれやれ、しずかになった」
やそべえさんがホッとして表の戸を開けたら、なんとイタズラダヌキが、口をおさえて死んでいたという事です。
おしまい
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