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日本のふしぎ話 第40話

村をおおった大木

村をおおった大木
滋賀県の民話

 むかしむかし、ある殿さまのところに、ある村から手紙にそえられて、たくさんのくさった木の枝や葉っぱが届けられました。
 手紙には、こう書かれています。
《村の土をほったところ、このような、くさった木の枝や葉がいくつもの層になってでてきました。ためしに村のあちこちや川むこうの土もほってみましたが、どこからも同じものがでてきます。あまりにもおかしなことですので、現物(げんぶつ)をそえておとどけいたします》
「はて、これはどういう事だろうか?」
 殿さまも、不思議に思いました。
 ひろい村のあちこちから、同じような物が出てくるのはおかしなことです。
 殿さまは家来たちに、あれこれと書物を調べさせました。
 するとある古い書物に、世にも不思議な事が書いてあったのです。
 そのむかし、天皇(てんのう)が重い病気になったので、御所(ごしょ→天皇の住むところ)の人たちはこまっていました。
 えらい占い師を呼んで、占ってもらうと、
「東のほうに一本の大きな木があります。その木が天皇にうらみをいだいているのです。木をきってしまえば、ご病気はたちどころに治るでしょう」
と、いうのでした。
 大きな木は、琵琶湖(びわこ)の近くの村にありました。
 御所ではたくさんの木こりにたのんで、すぐにその大木をきりたおす事にしました。
 ところがその大木は、幹(みき)のまわりが百メートルもあるという、信じられないほどの太さの木だったのです。
 村中を木かげにして天高くのびるその大木は、きってもきっても次の日の朝には、また元どおりの姿になっているのでした。
 御所ではまた、占い師を呼んでたずねました。
 すると占い師は、
「きった木のくずをまわりに残しておくと、木が元どおりになってしまうのです。天皇をよく思わない者が、それほど強いのろいをその木にこめたのでしょう。きった木のくずを毎日残らず焼いて、灰にしてしまわなければだめです」
と、いいました。
 そこで毎日、きった木のくずを焼きすてていると、七十日目にようやく、大木は山がくずれるようにたおれて、枝や木の葉が村じゅうにとびちって土にうまったのです。
 この木がたおれてから天皇の病気は一度はよくなりましたが、すぐにまた病にかかって、とうとう亡くなってしまいました。
 御所でほかの占い師にたずねたところ、こんどは、
「古い大きな木をきったことがわるい。どうしてそんなことをしたのだ」
と、いわれたという事です。

おしまい

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