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11月30日の日本民話
キツネとタヌキのばけくらべ
京都府の民話
むかしむかし、ある村のお宮さんに、化けるのが上手なキツネが住んでいました。
それから村のお寺にも、化けるのが上手なタヌキが住んでいました。
ある日の事、キツネとタヌキが村の中で、バッタリと顔を合わせました。
「キツネどん、お前さんは化けるのが、とてもうまいらしいね」
と、タヌキが言いました。
「いやいや、タヌキどん、お前さんこそうまく化けるそうじゃないか」
と、キツネが言いました。
でも、二匹でほめ合っているうちに、
「そんなら、どっちの化け方がうまいか、くらべてみようじゃないか」
と、いうことになったのです。
「では、あしたの朝、お宮さんにきてくれ。そこで化け比べをしよう」
と、キツネが言いました。
「いいとも。もしキツネどんが勝てば、おらが村を出ていく。そのかわりおらが勝ったら、キツネどんが村を出ていく。それでいいいな」
と、タヌキが言いました。
「ようし、わかった」
キツネは大急ぎで、お宮さんにもどっていきました。
タヌキも大急ぎで、お寺へもどっていきました。
さて次の日の朝、タヌキがお宮さんへいってみるとキツネの姿がありません。
(おかしいな。まさか逃げたんじゃあるまいな)
まわりをキョロキョロ見ていたら、社(やしろ)の前に大好きなあずきご飯がそなえてありました。
(しめしめ、キツネが現れる前に腹ごしらえだ)
タヌキがあずきご飯に口をつけようとしたとたん、あずきご飯がパッとキツネに変わりました。
「わあっ! なんだ、キツネどんか」
タヌキがビックリすると、キツネがいばって言いました。
「どんなもんだい。今日はおらの勝ちだ」
「しかたがない。今日はおらの負けだ。そのかわり明日の朝は、お寺へきてくれ」
タヌキが、くやしそうに言いました。
次の日の朝、キツネはお寺へ出かけていきました。
でも、タヌキの姿がありません。
(もしかして、おらに勝てないと思って、逃げてしまったのかな?)
まわりをキョロキョロ見ていたら、お堂の前にあぶらあげがそなえてありました。
(なんてうまそうなあぶらあげだ。タヌキが出てくる前にいただこう)
キツネがあぶらあげにかぶりつこうとしたとたん、あぶらあげがパッと消えて、タヌキが現れました。
「どんなもんだい。まんまとだまされたな」
今度は、タヌキがいばって言いました。
「まいった、まいった。おら、本物のあぶらあげかと思った」
キツネが、頭をかきました。
これで勝負は引き分けです。
キツネとタヌキの二匹はそれからもこの村にいて、ますます化け方のうでをみがき、どっちも村の人たちから化け名人と言われたという事です。
おしまい