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4月5日の世界の昔話
  
  
  
  ひな鳥とネコ
  ミャンマーの昔話 → ミャンマーの国情報
 むかしむかし、一羽のひな鳥がお母さん鳥に、
  「お母さん。あたしケーキがたベたい」
  と、おねだりしました。
   お母さん鳥は、すぐに聞きいれて、
  「いいわ。そのかわりおとなりヘいって、人間がすてた、まきのはしっこをひろってきておくれ。それでケーキを焼いてあげるからね」
  と、いいました。
   ひな鳥は、おとなりヘでかけていきました。
   そして、まきのはしっこを、二つ三つ見つけて、持って帰ろうとしました。
   ところが、そのときです。
   一ぴきの年とったネコが、ひな鳥を見つけてこっちへやってきました。
   ネコは、ひな鳥のそばまでくると、
  「おまえを、たべてやる!」
  と、おどかしました。
   ひな鳥は、
  「どうか、あたしをにがしてちょうだい。そうすれば、あたしのケーキをすこしわけてあげるわ」
  と、いっしょうけんめいたのみました。
   するとネコは、
  「いいだろう。やくそくだぞ」
  と、いって、そのままどこかヘいってしまいました。
   ひな鳥は、いそいでうちヘ帰りました。
   そして、お母さん鳥に、
  「とっても、こわいめにあったのよ」
  と、さっきのできごとをはなしました。
  「心配しなくてもいいよ」
  と、お母さん鳥はいい聞かせました。
  「お母さんが、いますぐ大きな大きなケーキを焼いてあげるからね。そうすれば、おまえがたべても、まだそのネコにあげるぶんがのこるでしょ」
   やがて、大きな大きなケーキが焼けました。
   お母さん鳥は、それをひな鳥にやりながら、
  「さっきのネコにやるぶんを、のこしておくのよ」
  と、ねんをおしました。
   でも、そのケーキがとてもおいしかったので、くいしんぼうのひな鳥は、みんなたベてしまいました。
  「くいしんぼうねえ、おまえは!」
  と、お母さん鳥は、ひな鳥をしかりました。
  「だいじょうぶよ。きっと、ネコはわすれているわ。それに、あたしたちの住んでいるところだって、知らないんですもの」
  と、ひな鳥は、のんきにいいました。
   ところが、むこうのほうから、あのネコがやってくるではありませんか。
   さあ、たいへんです。
   ひな鳥は、ブルブルふるえながら、
  「お母さん、どうしたらいい?」
  と、聞きました。
  「お母さんに、ついておいで」
   お母さん鳥とひな鳥は、おとなりの台所にとびこんで、そこにあった大きなツボの中にかくれました。
   けれども、ネコは二人が台所へにげこんだのを、ちゃんと知っていました。
   ネコは大きな声で、どなりました。
  「やい、くいしんぼうのひな鳥め。おれにくれるケーキはどこにあるんだ? でてこい。でてこないなら、おまえたちを二人ともくってしまうぞ!」
   ネコは二人を追いかけて、台所にとびこんできました。
   ところが、いくらさがしても、二人のすがたは見えません。
  「おかしいな? たしかに、ここへにげこんだんだがなあ。まあ、いいさ。ここには戸口が一つしかないんだから、そのうちにでてくるにきまっている」
   こういうと、ネコは戸口にすわりこんで、いつまでもまっていました。
   そのころツボの中では、お母さん鳥とひな鳥が、こわくてふるえていました。
   ところがすこしたつと、ひな鳥はおちつかなくなって、お母さん鳥の耳もとでささやきました。
  「お母さん、くしゃみがしたい」
  「がまんしなさい。くしゃみなんかしたら、わたしたちがこのツボの中にいることが、ネコにわかってしまうじゃないの」
  と、お母さん鳥は、いい聞かせました。
   しばらくすると、ひな鳥がまた、お母さんの耳もとでささやきました。
  「一回きりでいいから、くしゃみをさせて」
  「だめよ。ぜったいだめ」
   また、しばらくたちました。
   するとまたまた、ひな鳥がお母さんの耳もとでささやきました。
  「ちいちゃなくしゃみを、一回きりでいいから」
  「だめよ」
  と、お母さん鳥はこたえました。
   しばらくたちました。
   ひな鳥は、またお母さんの耳もとでささやきました。
  「ちっちゃなくしゃみを、一回の半分きりでいいから」
   お母さん鳥は、めんどうくさくなって、
  「いいわ」
  と、うっかり、いってしまいました。
   するとひな鳥は、大きな大きなくしゃみをしました。
  「ハックショーーン!」
   それが、ものすごく大きなくしゃみだったので、ツボがくしゃみのいきおいで、二つにわれてしまったのです。
   もちろん中からは、お母さん鳥とひな鳥がでてきましたが、ネコはくしゃみの音にビックリして、あわててにげていきました。
   あんまりすごい音なので、カミナリがおちたとでも思ったにちがいありません。
   こうしてお母さん鳥とひな鳥は、ぶじに台所からでていきました。
おしまい