| 
     | 
      | 
     
          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
          
         
よくわかる説教 
      
      
       むかしむかし、ある坊さんが町の集まりに出かけては、人々に為になる話をしていたのですが、聞いているみんなは無駄口(むだぐち→おしゃべり)ばかりで、なかなか熱心には聞いてくれません。 
 何とか話をちゃんと聞かせたいと考えた坊さんは、次の説教(せっきょう)の日、みんなに向かってこう言いました。 
「これから私がみなさんに何をお話しするか、わかりますか?」 
 するとみんなは、 
「さあ、わからねえなあ」 
と、口をそろえて言います。 
「そうか、わからぬか。わからぬ話をしても仕方がないから、今日は止めにしよう」 
 こう言って坊さんは、さっさと帰ってしまいました。 
 
 また次の説教の日、坊さんが前と同じ事を聞くと、みんなは帰られては困ると思い、 
「はい、よくわかりました」 
と、言いました。 
 ところが坊さんは、 
「ほお、わかっておるのか。それは大した物だ。しかしそれなら、話をしても仕方ない。今日はこれまで」 
と、またまた帰ってしまいました。 
 
 さて次の説教の日、坊さんが今度も同じ事を聞くと、みんなが言いました。 
「知っている者と、知らん者がおります」 
 すると、坊さんは喜んで、 
「それなら知っておる者が、知らない者に教えておくれ」 
と、やっぱり帰ってしまいました。 
 
 そのされたみんなは、どうしたものかと相談しました。 
「どうして坊さまは、すぐに帰ってしまうんじゃ?」 
「そうじゃ。何と答えても帰ってしまうのでは、どうしようもない」 
「いや、これはきっと、わしらがまじめに説教を聞かんから、坊さまが怒りなさったに違えねえ。ここは、みんなで謝りに行こう」 
 こうしてみんなは寺まで行って、説教を続けてくれる様にと頼んだのです。 
 
 そして次の集まりからは、みんながじっくり話を聞くようになったので、坊さんはとても熱心に説教をしました。 
 
 人の話は、ちょんと聞かなくてはいけません。 
 話を聞かないと、その人はこの坊さんの様に話してくれなくなりますよ。 
      おしまい 
        
         
        
       
     | 
      | 
    
       |