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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
        
       
おむすびコロリン 
      
      
       むかしむかし、木こりのおじいさんは、お昼になったので、切りかぶに腰をかけて、お弁当を食ベることにしました。 
「うちのおばあさんがにぎってくれたおむすびは、まったくおいしいからな」 
 ひとりごとをいいながら、タケの皮の包みを広げたときです。 
 コロリンと、おむすびが一つ地面に落ちて、コロコロと、そばの穴ヘころがりこんでしまいました。 
「おやおや、もったいないことをした」 
 おじいさんが穴をのぞいてみますと、深い穴の中から、こんな歌が聞こえてきました。 
♪おむすびコロリン コロコロリン。 
♪コロリンころげて 穴の中。 
「ふしぎだなあ。だれが歌っているんだろう?」 
 こんなきれいな歌声は、今まで聞いたことがありません。 
「どれ、もう一つ」 
 おじいさんは、おむすびをもう一つ、穴の中へ落としてみました。 
 するとすぐに、歌が返ってきました。 
♪おむすびコロリン コロコロリン。 
♪コロリンころげて 穴の中。 
「これは、おもしろい」 
 おじいさんは、すっかりうれしくなって、自分は一つも食ベずに、おむすびをぜんぶ穴へ入れてしまいました。 
 つぎの日、おじいさんは、きのうよりももっとたくさんのおむすびをつくってもらって、山へ登っていきました。 
 お昼になるのを待って、コロリン、コロリンと、おむすびを穴へ入れてやりました。 
 そのたびに、穴の中からは、きのうと同じかわいい歌が聞こえました。 
「やれやれ、おむすびがおしまいになってしまった。だけど、もっと聞きたいなあ。・・・そうだ、穴の中へ入って、たのんでみることにしよう」 
 おじいさんは、おむすびのようにコロコロころがりながら、穴の中へ入っていきました。 
 するとそこには、かぞえきれないほどの、おおぜいのネズミたちがいたのです。 
「ようこそ、おじいさん。おいしいおむすびをたくさん、ごちそうさま」 
 ネズミたちは、小さな頭をさげて、おじいさんにお礼をいいました。 
「さあ、今度はわたしたちが、お礼におもちをついてごちそうしますよ」 
 ネズミたちは、うすときねを持ち出してきて、 
♪ペッタン ネズミの おもちつき。 
♪ペッタン ペッタン 穴の中。 
と、歌いながら、もちつきを始めました。 
「これはおいしいおもちだ。歌もおもちも、天下一品(てんかいっぴん)」 
 おじいさんはごちそうになったうえに、ほしい物をなんでも出してくれるという、打ち出の小づちをおみやげにもらって帰りました。 
「おばあさんや、おまえ、なにがほしい?」 
と、おじいさんは聞きました。 
「そうですねえ。いろいろとほしい物はありますけれど、かわいいあかちゃんがもらえたら、どんなにいいでしょうねえ」 
と、おばあさんは答えました。 
「よし、やってみよう」 
 おじいさんが、小づちをひとふりしただけで、おばあさんのひざの上には、もうあかちゃんがのっていました。 
 もちろん、ちゃんとした人間のあかちゃんです。 
 おじいさんとおばあさんはあかちゃんを育てながら、仲よく楽しくくらしましたとさ。 
      おしまい 
        
         
        
       
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