| 
     | 
      | 
     
          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
          
         
白いおうぎと黒いおうぎ 
沖縄県の民話 → 沖縄県情報 
      
      
       むかしむかし、あるところに、二人の姉妹がいました。 
 お姉さんの方は色白できれいな顔をしているのに、妹の方は色黒でちっともきれいではありません。 
 だからお母さんは、色白できれいな顔のお姉さんばかりを可愛がっていました。 
 
 ある日の事、二人が一緒に道を歩いていると、向こうから馬に乗った男の人がやって来て尋ねました。 
「この村のお宮へ行きたいのですが、どっちへ行けばいいのでしょうか?」 
 この男の人はひげだらけの顔をしていて、汚れた着物を着ていました。 
(なんて汚いんでしょう。こんな人とは、口をきくのもいやだわ) 
 そう思ったお姉さんは、聞こえないふりをしました。 
 でも、親切な妹は、 
「それでは、わたしが案内してあげましょう」 
と、村はずれにあるお宮さんまで、男の人を連れて行ってあげたのです。 
 二人がお宮の前まで来ると、男の人はふところから白いおうぎを出して言いました。 
「わたしは人間の姿をしているが、本当は山の神じゃ。お前はまことに親切な娘。お礼にこのおうぎであおいでやろう」 
 山の神さまが、白いおうぎで娘をあおぐとどうでしょう。 
 色黒だった娘の顔が、みるみる色白できれいになったのです。 
「よい顔じゃ。お前のうつくしい心には、その顔が似合っておる。 
 ・・・それにしても、お前の姉さんはひどい娘じゃ。 
 わしの汚いかっこうを見て、口をきこうともしなかった。 
 いくら色白できれいな顔をしておっても、心はまっ黒だな」 
 そう言って、山の神さまはお宮の中へ消えて行きました。 
 
 さて、妹が戻ってくると、お姉さんは目を丸くして驚きました。 
 色が黒くてみっともない顔の妹が、見ちがえるほどきれいになっていたのです。 
「どうして、そんなにきれいになったの?」 
 美しさで負けたお姉さんは、くやしくてたまりません。 
 そこで妹からわけを聞き出すと、すぐにお宮さんへ飛んで行きました。 
「山の神さま、お願いです。どうかわたしも、おうぎであおいでください」 
 するとお宮の中から、山の神さまが出てきて言いました。 
「そんなにあおいでほしけりゃ、のぞみ通りにあおいでやろう」 
 山の神さまはふところから黒いおうぎを取り出すと、お姉さんの顔をあおぎました。 
 すると色白で美しかったお姉さんの顔はみるみる黒くなり、とてもひどい顔になったのです。 
 でも、それを知らないお姉さんは、大喜びで妹のところへもどってきました。 
「どう、わたし、すごくきれいになったでしょう?」 
「・・・・・・」 
 妹は何も言えなくて、首を横にふりました。 
「えっ?」 
 お姉さんはあわてて近くにある池に行くと、水面に自分の顔をうつしてみました。 
 するとそこにうつっているのは、色黒のみにくい顔だったのです。 
「どうしよう、どうしよう」 
 お姉さんはすぐにお宮へ行って、元の顔にもどしてくれるように頼みました。 
 でもどこへ消えたのか、山の神さまは二度と姿を現しませんでした。 
 
 さて、妹はそれからもますますきれいになって、その国のお殿さまの奥方になり、いつまでも幸せに暮らしました。 
 しかしお姉さんの方は、一生、色黒でみにくい顔だったそうです。 
      おしまい 
        
         
        
       
     | 
      | 
    
       |