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      福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
       
        
       
さとり 
      
      
       むかしむかし、木こりが山に小屋を立てて、毎日毎日オノをふるっていました。 
         
 ある日、木こりが木を切っている途中で日が暮れてしまいました。 
「仕方ない。今夜はここで野宿をするか」 
 木こりが枯れ枝を拾い集めて、たき火をしていると、 
 ガサガサ、ガサガサ。 
と、クマザサをかきわけて、ひとつ目の一本足が現れました。 
 一つ目の一本足はたき火のそばに来ると、黙って手をあぶりはじめます。 
(何だ、この化け物は?) 
 木こりがそう思うと、ひとつ目の一本足がにやりと笑って言いました。 
「今、お前が何を思ったか、当ててやろう。 
『何だ、この化け物は?』 
 そう思っただろう」 
 ひとつ目の一本足は、見事に言い当てました。 
(こいつは、おれの思う事がわかるのか? こいつはうわさに聞く、さとりの化け物かもしれん) 
 木こりがそう思うと、ひとつ目の一本足が言いました。 
「お前、『こいつは、おれの思う事がわかるのか? こいつはうわさに聞く、さとりの化け物かもしれん』と、思ったろう」 
 またまた、言い当てました。 
(こんな化け物に、構ってはおられん) 
 木こりが逃げ出そうとすると、ひとつ目の一本足がまた言いました。 
「今、『こんな化け物に、構ってはおられん』と、思ったろう」 
 怖くなった木こりが、 
(こんな化け物、はやく帰ればいいが) 
と、思うと、ひとつ目の一本足はまた言いました。 
「今、『こんな化け物、はやく帰ればいいが』と、思ったろう」 
(何とかして、こいつを追い返す方法はないだろうか?) 
 木こりが考えていると、たき火の火の粉がパチーンとはじけ飛んで、ひとつ目一本足の大きな目玉に飛び込みました。 
 ひとつ目の一本足は、びっくりして飛び上がると、 
「あちちちちっ! 人間て、思わん事もするもんだ。危なくて、こんなところにはおられん」 
と、あわてて山へ逃げていきました。 
      おしまい 
         
         
        
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