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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
        
       
海の水はなぜしょっぱい? 
      
      
       むかしむかし、ある村に、貧乏な男がいました。 
 ある日の晩、その男のところへ、白いひげのおじいさんがやってきました。 
「道に迷ったので、一晩泊めてくだされ」 
「ああ、それはお困りでしょう。いいですとも。さあどうぞ」 
 男は親切に、おじいさんを泊めてやりました。 
 次の日、おじいさんは男に小さな石うすをくれました。 
「泊めてもらったお礼じゃよ。これは不思議な石うすでな、右へ回せば欲しい物が出て、左へ回せば止まるんじゃ。止めるまで出続けるから、気をつけるんじゃぞ」 
 おじいさんはそう言って、出て行きました。 
 男はためしに、石うすを回してみました。 
「米出ろ、米出ろ」 
 すると石うすから、まっ白い米がザクザクと出てきました。 
 あわてて左へ回すと、米はピタリと止まります。 
「へー、こいつはすごいや!」 
 男は米や魚をたくさん出して、まわりの家にも分けてあげました。 
 さて男のとなりに、欲張りな兄さんが住んでいました。 
 兄さんは弟が急にお金持ちになったのを不思議に思い、こっそりのぞきにきました。 
「そうか、なるほど。全ては、あの石うすのおかげだな。しめしめ」 
 兄さんは夜になると弟の家に忍び込んで、石うすを盗みました。 
 そして舟にのって、海へ逃げました。 
「よしよし、ここまで来れば大丈夫だろう」 
 兄さんは一生懸命に舟をこいだので、おなかがペコペコになりました。 
 そこで、持ってきたおにぎりを取り出すと、 
「そうだ、塩をつけて食べると、きっとうまいだろう。よーし、塩出ろ、塩出ろ」 
と、石うすを回すと、石うすからは塩がザラザラとあふれ出して、たちまち舟いっぱいになりました。 
「わっ、わっ、もう止まれ! 止まれ! 止まってくれー!」 
 欲張り兄さんは、石うすから物を出す方法は見ていたのですが、止め方は見ていなかったのです。 
 ついに舟は塩の重さに耐えられなくなり、そのまま海に沈んでしまいました。 
 ところであの石うすは、今でもグルグルと回って、塩を出しています。 
 海の水がしょっぱいのは、こういうわけなのです。 
      おしまい 
        
         
        
       
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