| 
      | 
     
          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
        
      イラスト Smile STATION 
       
祭りに参加したキツネ 
      
       むかしむかし、ある村に、人を化かして、いたずらをするキツネがいました。 
 村人たちの中には、ドロのだんごを食べさせられたという人や、お風呂だといわれて、こやしのおけに入れられた人など、いろいろないたずらをされる人がふえてきました。 
 そこで、村人たちは、 
「なんとかしてキツネをこらしめ、いたずらをやめさせなければいけない」 
と、いいだしました。 
 それには、おこんギツネという、キツネの親分をつかまえなくてはいけないのですが、そのキツネはかしこくて、なかなか捕まりません。 
 すると、ある若者が、 
「今度の盆踊りで、化け比べをすれば、化けるのが好きなおこんギツネは、きっと出てくるよ」 
と、いいました。 
 おこんギツネをおびき出すために、今年の盆踊りでは、特別に工夫をこらして、いろいろな姿に化けて踊って、一番うまく化けた者にはほうびをやろうというのでした。 
「ほう、それはおもしろい」 
と、みんなは賛成しました。 
 そこで踊りに出る人たちは、こっそりいろんな用意をしました。 
 そして、いよいよ盆踊りの夜、村人たちは、森のおみやの前の広場に集まりました。 
 たいこがなりひびき、歌声が流れていきます。 
♪よいやさ、よいやさ。 
♪よいやさ、よいやさ。 
 みんなは輪になって、グルグルと踊りまわっています。 
 カゴを背負った、花売り娘。 
 槍をかついだ、やっこさん。 
 美しい、お姫さま。 
 ひょっとこのお面の男。 
 ひげを生やしたお侍。 
 お坊さん、赤鬼、金太郎など。 
 いろいろな姿に変装した踊り手たちがいます。 
 その向こうには、ごほうびにもらう、お酒の樽や、焼き鳥のごちそうなどが、たくさん並べてあります。 
 踊りまわるうちに、お姫さまとひょっとこがぶつかったり、お侍が転んだひょうしに、立派な口ひげを落としたりして、見物している人たちは、ドッと笑い転げています。 
 するといつのまにか、踊りの輪の中に、立派な若いお侍の姿をした踊り手がまじっていました。 
「ほう、見事な若侍じゃな」 
「うん、大した若侍じゃ」 
と、みんながほめます。 
 それに、踊る手ぶりや、体の動かし方が、なかなか見事です。 
 やがて、夜もふけたころ、たいこの音もやみ、踊り手たちの輪もとけて、盆踊りが終わりました。 
 みんなは、まわりのむしろの上に座って、ホッと汗をふいています。 
「さあ、だれが一番うまく化けて、うまく踊ったかな」 
 見物していた人たちが、一番よいと思った人を決めることになりました。 
 やっこさん、お姫さま、ひょっとこも、人気がありましたが、一番になったのは、あの若侍の踊りでした。 
「ほんとに、見事じゃったのう」 
 ごほうびのお酒を入れた樽が、若侍の前に並べられました。 
 もちろん、食べきれないほどのごちそうも、出されました。 
「そら、お祝いじゃ。飲め、飲め、いくらでも飲め」 
 たくさんの酒をすすめられた若侍は、たちまち酔っぱらってしまいました。 
 そして、ゴロンと横になりました。 
 すると、体の後ろの方から、長いしっぽがポックリと出てきました。 
「ほれ、あれあれ、あのしっぽは、キツネだぞ」 
「やっぱり、キツネのおこんじゃ」 
 そこでみんなは、しめたとばかりに、キツネのおこんを捕まえて、なわでしばってしまいました。 
「さあ、おこん。もう逃げられないぞ、覚悟しろ!」 
「いたずらものの尻尾を、切ってやる!」 
 おこんギツネは、すっかりキツネの姿に戻って、 
「尻尾ばかりはごかんべんを。尻尾はキツネの宝物です。どうか許してください。コーン、コーン」 
と、頭を下げました。 
「では、もういたずらはしないか?」 
「はいはい、もう、二度といたしません。コーン、コーン」 
 おこんギツネは、一生懸命にあやまりました。 
 そこでみんなは、尻尾を切るのをやめて、なわをといてやりました。 
 喜んだおこんギツネは、何度もお礼をいって、頭と尻尾をフリフリ、森の奥へ逃げていきました。 
 コーン、コーン 
      おしまい 
         
         
        
       
     | 
      | 
     |