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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
        
       
石のいも 
      
      
       むかしむかし、ある村に、空海(くうかい)という名のお坊さんがやってきました。 
 お坊さんは、朝から何も食べずに、山をこえて谷を渡り、やっとこの村にたどりついたのです。 
「ああ、腹がへった。目が回りそうじゃ」 
 すると向こうから、一人の女の人が歩いてきました。 
 女の人は、畑から帰ってきたところでした。 
 手にザルをかかえ、その中にはおいしそうなイモが、いっぱい入っていました。 
 それを見て、お坊さんは思わず声をかけました。 
「お願いじゃ、そのザルの中のイモを一つでいい、わしにくだされ」 
 女の人は、ジロリとお坊さんを見ました。 
(ふん。なんて汚い坊主だろう) 
 この女の人は、みすぼらしいお坊さんにイモをあげるのがいやだったので、 
「それは残念。このおイモは、食べられませんよ」 
と、言いました。 
「えっ、どうして?」 
「これは、おイモそっくりの石なんです」 
「石ですか。それは仕方がない」 
 お坊さんは頭を下げると、また、トボトボと道を歩いていきました。 
「うふふ。うまくいったわ。だれが、大事なおイモをあげるもんですか」 
 次の年の秋になりました。 
「今年も、おいしいおイモがたくさん取れますように」 
 あの女の人は大きなザルをかかえて、自分の畑に行きました。 
 さっそく畑の土をほり返してみますと、去年よりも大きなイモがどんどんと出てきます。 
「今年は豊作だわ。それに、ズッシリと重くて、よく実がつまっている。・・・しかし、本当に重たいわね。まるで石みたい。・・・あれ、これは!」 
 イモだと思っていたのは、イモそっくりの石だったのです。 
「あら、これも、これも、これも、ぜんぶ石だわ!」 
 女の人の畑のイモは、全てイモにそっくりな石だったのです。 
 そのとき、女の人は去年の今ごろ、お坊さんにうそをついたことを思い出しました。 
「ああ、あのとき、わたしがうそをついたから、神さまが天罰(てんばつ)をあたえたんだわ」 
 女の人は反省して、それからは貧しい人にほどこしをする、心やさしい人になりました。 
        
         
        
       
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