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      福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうの日本昔話 
       
        
       
打たぬのに、鳴るたいこ 
      
      
       むかしむかし、あるお寺に、新しい小僧さんが来ました。 
 和尚(おしょう)さんは、小僧さんがどれくらい役に立つかたしかめようと、わざとむずかしい事を言いつけました。 
「小僧よ、打たぬたいこに、鳴るたいこ。手ふり足ふり、しかめ顔をする物を持ってきなさい」 
「へえ、そんな物があるのですか?」 
「この世に、ない物はない。もし持って来られないのなら、お前の負けじゃ。『まいりました、まいりました』と、十ぺん言って、毎日三度のご飯を二度にがまんしなさい」 
「・・・わかりました。何とか持ってきましょう」 
 
 小僧さんは一人になると、腕を組んでジッと考えました。 
「『打たぬたいこに、鳴るたいこ。手ふり足ふり、しかめ顔をする物』か、そんな物が本当にあるのだろうか? でも何とかしないと、ご飯をへらされるし。・・・そうだ」 
 小僧さんはニッコリ笑うと、小さな袋を持ってお寺の裏の森へ出かけました。 
 そして森から帰って来ると、今度はお金を持って町へ行き、たいこを一つ買ってきました。 
 そしてたいこに細工をすると、和尚さんの部屋へ行きました。 
「和尚さま、お言いつけの物を持って来ました」 
「ほう、どれどれ」 
 和尚さんは、小僧さんが差し出したたいこを見てびっくりしました。 
 誰もたたかないのに、 
『ブルン、ブルン』 
と、ひとりでに鳴っています。 
「これは一体、どういう事だ?」 
 和尚さんは、たいこのふちから中をのぞこうとしました。 
 するとハチが飛び出してきて、和尚さんの鼻の頭をちくりとさしたのです。 
「うぎゃー、いたい、いたいっ!」 
 思わずしかめ顔をした和尚さんは、手や足をふりあげてハチを追い払いました。 
 それを見て、小僧さんが和尚さんに言いました。 
「そらね、和尚さまがおっしゃったように、『打たぬのに、鳴るたいこ。手ふり足ふり、しかめ顔をする物』でしょう」 
「・・・たっ、たしかに」 
 見事にやられた和尚さんは、二度と小僧さんをためすような事はしなかったそうです。 
      おしまい 
         
         
        
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