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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 江戸小話の朗読 
         
        
      あせ 
      
      
        ある夏の暑い日。 
 外出先から帰って来た旦那(だんな)が、小僧の信吉(しんきち)に言いました。 
「あつい! あつい! あつい! 今日のあつさはとくべつじゃ。信吉、すまんが後ろから、そこの大うちわであおいでおくれ」 
「はーい」 
 信吉は返事をすると、旦那の後ろにまわって、うちわの柄(え)が折れるくらいに力を入れて、大うちわで風を送ってやりました。 
 すると旦那の体から、みるみるあせが引いていきます。 
「ああっ、さっぱりした。信吉、お前のおかげで、あせはどこかへふっ飛んでいったぞ」 
 旦那が気持ち良さそうに言うと、後ろの信吉は全身にあせをかきながら言いました。 
「そうでございましょう。なにしろあせは、全部わたくしの方にまいりましたから」 
      おしまい 
         
         
        
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