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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 江戸小話の朗読 
         
        
      くせ 
      
        あるところに、何かというと、鼻をこするくせの男と、頭をポンポンとたたく、くせを持つ男がいました。 
 ある日、このふたりがそうだんして、 
「今日から、くせをやめよう」 
と、きめて、それから、いろいろおしゃべりをはじめました。 
 ふたりとも、つい手が鼻にいくのをとめたり、頭にいく手をおさえたりしていると、ひとりの男が、 
「なんと、このごろ、弓矢をひきにいったかい」 
と、ききました。 
 すると、もうひとりの男が、 
「うん、いったいった。こうして、ぎゅうーっと、つるをしぼって」 
と、いって、弓のつるをしぼるふりをして、鼻をこすりました。 
 もうひとりの男がこれをみて、ポンポンと頭をたたき、 
「それで、その矢がマトにあたれば、『ポン!』このような音が出るだろう」 
 なかなか、くせというものはなおりませんね。 
      おしまい 
         
         
        
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