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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 江戸小話の朗読 
         
        
      初めてのこたつ 
      
        むかし、大そう山ぶかい村にくらしている男たちが、いくにんかで、江戸けんぶつに出かけたときのことです。 
 冬のことなので、宿屋(やどや)のざしきには、ほりごたつ(床をくりぬいてつくった、こたつがつくってありました。 
「おさむうございますねえ。さあ、どうぞ、おこたにあたってください」 
 やどの女のひとは、そういって、だいどころのほうにもどっていきました。 
 男たちはたがいに、 
「おまえ、先に入れ」 
「おまえこそ、先に入れ」 
と、ゆずりあって、もじもじしていました。 
 じつをいうと、男たちの村には、こたつがなかったので、だれも、こたつのはいりかたをしらないのです。 
「まあ、ここは、しょうやさんからどうぞ」 
と、いうことになりました。 
 しょうやさんも、こたつに入るのは初めてで、入りかたをしりません。 
 でも、しょうやといえば、村長です。 
 まさか、しらないとはいません。 
(風呂にはいるようなもんじゃろ) 
「それではみなさん、おさきにごめん」 
 しょうやさんは、着物をぬぐと、ふんどしひとつで、ほりごたつにもぐりこみました。 
 それからおもむろに、こたつの中をひとまわりすると、体中がポカポカしてきました。 
「あー、いいこたつだった」 
 しょうやさんは、こたつからはいだすと、あせをぬぐって、着物をきこみました。 
「なるほど。こたつってものは、はだかではいるのか」 
 つれのみんなは、しょうやさんのまねをして、じゅんぐりに、こたつに入っては、 
「ほんとに、けっこうな。こたつで」 
と、いったそうです。 
      おしまい 
         
         
        
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