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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 江戸小話の朗読 
         
        
      火事の炭 
      
        あるとき、村で火事がありました。 
 けちで有名な亭主は、二階のもの干しからずっとそのようすを見ながら、女房を呼んで言いました。 
「あの燃えぐあいじゃあ、だいぶん炭ができているだろう。おまえ、ひとっ走りいって、炭をもろうてこい」 
 そこで女房は、さっそく火事場まで出かけていったが、少しして、何も持たずに帰ってきました。 
「おまえさん、炭をわけてほしいと、たのんでみましたが、『このたわけもんが! 人が一生けんめい火を消しとるときに、何いうとる、あぶないから早う帰れ』と、どなられ、炭は一本ももらえませんでした」 
 すると、それをきいた亭主は、 
「なに、そんなことを言うて、炭は一本ももらえなんだか。ようし、わかった。そんなら今度うちの焼けたときには、炭は一本もやらんぞ」 
と、炭のように、まっ赤になっておこったそうです。 
      おしまい 
         
         
        
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