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          福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうの日本昔話 
         
        
       
おネズミがお死んでる 
秋田県の民話 → 秋田県情報 
      
      
       むかしむかし、ある田舎の娘さんが、町のお金持ちの家へ働きに行きました。 
 でも、田舎で育った娘さんは、ていねいな言葉をうまく使うことができません。 
 お客さんにお茶を出すときも、 
 「茶を飲め」 
 などというので、お金持ちのおかみさんは困ってしまいました。 
 そこで娘さんに、 
「お客さんには、ていねいな言葉を使わなくてはいけません。何でも言葉の初めに、『お』という字をつけて言いなさい。そうすれば、ていねいな言葉になりますよ」 
と、注意したのです。 
(茶に『お』をつければ、お茶。なるほど、『お』という字をつければいいんだな) 
 それから娘さんは、いろいろな言葉に、『お』という字をつけてみました。 
 ネコは→おネコ、カラスは→おカラス、カボチャは→おカボチャ。 
(これで、もう大丈夫) 
 娘さんは、『お』という字をつけた言葉を、早く使いたくてたまりません。 
 家の前でウロウロしていたら、ネズミがどぶに落ちて死んでいました。 
 娘さんはさっそく、おかみさんの部屋にかけつけて、 
「おおかみさん、おネズミがおどぶに落ちてお死んでる」 
と、言いました。 
 おかみさんと一緒にいたお客さんは、それを聞いて大笑いです。 
 お客さんが帰ったあと、おかみさんは娘さんに言いました。 
「何でもかんでも、『お』という字をつけてはいけません。役に立つときだけ、『お』の字をつけなさい」 
(そうか、役に立つときだけか) 
 さて、その晩のこと。 
 お金持ちの家族が晩ごはんを食べているところへ、娘さんがお味噌汁を運んできました。 
 ふとおかみさんを見ると、おかみさんのおでこに、おひたしのなっぱがついています。 
 そこで娘さんは、大声で言いました。 
「かみさん、でこにひたしのなっぱがついて、かしいだよ」 
(・・・・・・・ああ、この娘には、何と言ったらわかるのだろう) 
 おかみさんは、ガッカリして、 
「そういう時は、『おかみさん、おでこにおひたしのなっぱがついて、おかしいですよ』と言うんですよ」 
と、言い聞かせました。 
 すると娘さんは、ニッコリわらって、 
「おやっぱり『お』の字をおつけたほうが、おいいんだべ」 
と、言ったのです。 
      おしまい 
         
         
        
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