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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
          
         
なべのふた 
北海道の民話 → 北海道情報 
      
      
       むかしむかし、ニシンで大漁に捕れることでさかえた北海道の江差(えさし→北海道おしま半島の日本海岸にある港町)に、しげ次郎という、とんちのきく男がいました。 
         
 ある日の事、しげ次郎がお腹を空かして町を歩いていくと、イモを煮ているおいしそうなにおいがただよってきました。 
「おや? どこの家で煮ているんだ?」 
 においをたどっていくと、知り合いの家の前に出ました。 
(こいつはいい。うまいことして、イモを食ってやろう) 
 そう考えたしげ次郎は、 
「やあやあ、今日はお天気も良くて、気持ちが良いですな」 
と、あいさつをしながら、知り合いの家に近づいていきました。 
 しげ次郎に気がついたこの家のおかみさんは、しげ次郎にイモを食べられては大変と、ナベにふたをして知らん顔です。 
 しげ次郎は少し声をひそめて、おかみさんに言いました。 
「実はさっきな、アミ元の家の隣で、ものすごい夫婦げんかがあったんだ。これがひでえのなんの、こんなすごいけんかは見たことがねえ」 
 するとおかみさんが、話しに興味を持って聞きました。 
「ほう、そうね。して、どんなようすだったね?」 
 しげ次郎はニヤリと笑うと、話を続けました。 
「まずは、親父さんがてんびん棒をふりあげて、母ちゃんになぐりつけた」 
「そっ、それで?」 
「ところが、母ちゃんも負けてはいない。そばにあったナベのふたをパッと取って、てんびん棒をガチンと受け止めたんだ」 
 しげじろうはそう言いながら、ナベのふたを取りました。 
 ナベの中では、イモがおいしそうに煮えています。 
「ありゃ、イモをにてたのか。 
 あっ、そうそう、それでな。 
 その母ちゃんも、イモを煮ておってな。 
 親父のてんびん棒をナベのふたで受け止めておいて、もう片方の手でナベのイモを親父の口ヘ『むぎゅーっ!』て、押し込んだんだ。 
 すると親父は、『あちちち。むぎゅーっ! あちちち、むぎゅーっ、あちちちっ・・・』」 
 しげ次郎は次々にイモを自分の口へ押し込んで、残らず食べてしまいました。 
「はい、ごちそうさん。これが夫婦げんかのようすさ」 
 そう言って腹一杯にイモを食べたじげ次郎は、どこかへ行ってしまいました。 
      おしまい 
        
         
        
       
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