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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
          
         
働かない使用人 
千葉県の民話 → 千葉県の情報 
      
      
       むかしむかし、大穴村と言うところに、岡本という名前の大地主がいました。 
 この大地主の旦那はとても大きな赤鼻だったので、みんなから『天狗さま』と呼ばれていました。 
 
 さて、屋敷には十数人の使用人がいましたが、旦那の天狗さまが優しい事を良い事に、あまり働こうとはしないのです。 
「どうすれば、みんな真面目に働いてくれるのだろうか?」 
 頭を悩ませた天狗さまは、ある朝、使用人たちに言いました。 
「今日は田の草取りだから、みんな精を出してがんばってくれ。一生懸命やれば、ごちそうを出してやるぞ」 
 しかし、使用人たちは、 
「ごちそうと言っても、どうせ、小さなめざしが一匹付く程度だよ」 
「そうだな。いつもの様にのんびりとしよう」 
と、あまり真面目に働かず、言いつけられた草取りを半分ほどで止めてしまったのです。 
 
 その日の夕方、草取りを終えた使用人たちが帰って来ると、天狗さまがニヤニヤと笑いながら言いました。 
「今日は暑いのに、ご苦労さんだったね。言いつけ通り、精を出して頑張ってくれたかな?」 
 すると、使用人の一人が、 
「はい、旦那さま。 
 みんな、精を出して頑張りました。 
 ・・・それで、朝のお約束のごちそうは、いつ出してもらえるのですか?」 
と、尋ねると、天狗さまはすました顔で、 
「おや? お前たちにはもう、ごちそうを出したはずだが」 
と、言うのです。 
「???」 
 使用人たちは天狗さまが行ってしまうと、ぶつぶつと文句を言いました。 
「何を、言ってやがる! いつ、ごちそうを出してくれたんだ?!」 
「確かに、おれたちは真面目に仕事をしなかった。しかし、うそをつく天狗さまも、ひどい人だ!」 
 
 次の日も使用人たちは、のんびりと田の草取りを始めました。 
 そして夕方になり、ようやく言いつけられた仕事が終わった頃、使用人の一人が大声で言いました。 
「おーい、こんな所に、上等なごちそうが用意してあるぞ」 
 その声にみんなが集まると、確かに今まで見た事もないほど上等な料理と上等なお酒が、人数分並んでいるのです。 
 でも残念な事に、用意されたのが昨日だったので、ごちそうはすでに腐っていました。 
 これを見て初めて、使用人たちは天狗さまが昨日言った言葉の意味が分かりました。 
「ああ、もったいない事だ。昨日、天狗さまの言いつけ通りに働いていたら、このごちそうにありつけたのに」 
「そうだな。これからは、真面目に働こう」 
 
 こうして使用人たちは、次の日から真面目に働くようになったのです。 
      おしまい 
        
         
        
       
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