| 
      | 
     
      福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうの世界昔話 
       
        
       
      知恵のある娘 
グリム童話 → グリム童話の詳細 
      
      
       むかしむかし、あるところに、貧しいけれど正直者のお百姓さんがいました。 
 このお百姓さんが畑を耕していると、土の中から金のうすが出てきました。 
「おおっ、なんと素晴らしいうすだ。よし、これは王さまに差し上げよう」 
 お百姓がさっそく金のうすを持ってお城へ行くと、王さまは一目見て言いました。 
「なるほど、素晴らしいうすだな。ほめてつかわそう」 
「ははっ、ありがとうございます」 
 頭を下げるお百姓に、王さまは少し首をかしげて言いました。 
「しかし、うすだけとは妙だな。 
 うすだけあっても、きねがなくては役には立たん。 
 土の中にうすがあったのなら、きねもあったであろう。 
 百姓よ、どうしてきねを持って来ないのだ?」 
 それを聞いたお百姓さんは、あわてて言いました。 
「いいえ、きねはありません。土の中から出てきたのは、うすだけです」 
 ところが王さまは、それを聞き入れてくれません。 
「いいや、お前はきねまでわたしにくれるのが、おしいと思ったのであろう。それで、そんなうそを言っているのだろう」 
「いいえ、本当に、うすしかなかったのです」 
「うそを申すな! このうそつき百姓め! 本当の事を言うまでは、お前を帰さないぞ!」 
 こうして王さまは、お百姓さんを牢屋に入れてしまったのです。 
 
 その事を聞いたお百姓さんの娘は、さっそく城へかけつけると涙を流して王さまに言いました。 
「王さま。本当に、きねはなかったのです。うそを言っているのではありません。どうか、父をお許しください」 
「うむ・・・」 
 王さまは娘の涙を見て、お百姓の言葉がうそではないとわかりました。 
 でも、一度牢屋に入れた者を簡単に許してしまうのは、王さまが間違った判断をしたと言っているようなものです。 
 そこで王さまは、こう言いました。 
「よろしい、許してやろう。 
 ただし、わたしの出す問題が解けたらだ。 
 いいか、よく聞けよ。 
 お前は一度家に帰り、着物を着ないで、裸でもなく、馬にも車にも乗らず、道を歩かず道を通って、この城まで来てみなさい。 
 それが出来たら、お前の父親を許してやろう」 
 さあ、大変な事になりました。 
 これはとても難しい問題です。 
 でも、しばらく考えていた娘は、 
「そうだわ」 
と、すぐにっこりして、王さまの前から引き下がりました。 
 
 家へ帰った娘は着物を脱いで裸になると、大きな魚取りのアミで体をすっぽりと包みました。 
 次にアミのはしをロバの尻尾に結びつけると、ロバに自分の体を引きずらせながら、お城へとやって来たのです。 
 これで、着物を着ないで、裸でもなく、馬にも車にも乗らず、道を歩かないで、城へ来た事になるのです。 
 王さまは、娘の知恵にすっかり感心して言いました。 
「お前は、なかなか利口な娘だ。よろしい、約束通り父親を許してやろう」 
 こうしてお父さんは、すぐ牢屋から出されました。 
 そしてその上に娘はたくさんのごほうびまでもらって、お父さんと一緒に家へ帰りました。 
      おしまい 
          
         
  | 
      | 
    
       |