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          福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうの世界昔話 
 むかしむかし、カンチールというかしこくて小さなシカが、森で友だちと遊んでいました。 
   走り回った力ンチールは、のどがかわいたので、 
  「ちょうどいいや。あの上に乗っかれば、よく水が飲める」 
 もしもワニの背中だったら、乗っかったとたんにパクリと食ベられてしまいます。 
  「よし、棒かワニか、調ベてやろう」 
  「そこに浮かんでるのは、棒かな? ワニかな? 棒なら、今にひっくり返るぞ。ワニだったら、 いつまでもジッとしてるけどなあ」 
 すると水に浮かんでいた太い物が、急に動き出しました。 
   そしてグラリとひっくり返って、ワニのお腹が出たのです。 
 「しまった。せっかく待ちぶせしていたのに、おしいことをした」 
   ワニはくやしがって、今度は林の中に穴をほってもぐりこみました。 
  「大きな穴だなあ。もしかすると、ブタさんの家かもしれないぞ」 
  「ウヒャァー。いつかのワニだ!」 
   トラはカンチールを食べようと、するどいキバをむき出して、こっちに近づいてきます。 
  「トラさん、いいことを教えてあげましょうか? 実はあっちの林に、ブタさんがいるんですよ」 
  「なに、ブタだって。それはありがたい。ブタはお前なんかより、ずっとおいしいからな。さあ、どこだ。連れて行ってくれ」 
  「ここです、トラさん。この穴ですよ」 
   でも穴はカラッポで、なにもいません。 
  「力ンチールめ、よくもおれをだましたな!」 
   するとカンチールは、近くの木を見上げていました。 
   するとカンチールは、木の上にぶら下がっている物を指さして言いました。 
  「ほら、あの木の枝にぶらさがっているでしょう。小さいけど、とってもいい音がするんですよ」 
 トラは背伸びをすると、木の枝にさがっている物を力いっぱいたたきました。 
   ところがそれは、ハチの巣だったのです。 
   チクリ、チクリ、チクチク。 
 転げ回るトラをしりめに、カンチールはどこかへ逃げてしまいました。 おしまい  | 
    
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