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      福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうの世界昔話 
       
          
       
逃げ出したパンケーキ 
ノルウェーの昔話 → ノルウェーの国情報 
      
      
       むかしむかし、ある村に、すぐにおなかのすく子どもたちが七人いました。 
 お母さんは子どもたちに、おいしいパンケーキを焼いています。 
 ミルクで粉をこねて、おナベで焼くと、パンケーキがフワッとふくらみました。 
「お母さん、早く食ベさせて。ちょっとでいいから。おなかペコペコだよ」 
 一人の子どもがいいました。 
「ねえ、お母さんって、とってもいい人。だからわたしにもね」 
 二番目の子どもが、いいました。 
「ねえ、いい人で、きれいなお母さん」 
 三番目の子どもも、いいました。 
「ねえ、いい人で、きれいで、やさしいお母さん」 
 四番目の子どもも、いいました。 
「ねえ、いい人で、きれいで、やさしくて、大好きなお母さん」 
 五番目の子どもも、いいました。 
「ねえ、いい人で、きれいで、やさしくて、大好きで、世界一のお母さん」 
 六番目の子どもも、いいました。 
「ねえ、いい人で、きれいで、やさしくて、大好きで、世界一で、すてきなお母さん」 
 七番目の子どもも、いいました。 
「はいはい、もうすぐよ。ちょっと待って。パンケーキをひっくり返すからね」 
 お母さんがナベの中のパンケーキをひっくり返そうとしたとき、パンケーキはピョコンと飛び出して床の上に落ちると、クルクル回りながら戸口から外へ走っていきました。 
「あらあら」 
 お母さんは、おナベとナイフを持ったまま追いかけます。 
 あとから、七人の子どもが追いかけます。 
 その後ろから、おばあさんもヨチヨチ追いかけます。 
「待ってよう。パンケーキさーん」 
「だれかつかまえて!」 
 みんなで追いかけましたが、パンケーキはクルクルころがって、ずっと向こうに見えなくなりました。 
 パンケ一キはころがりながら、てくてくと歩いている男の人に会いました。 
「やあ、こんにちは、パンケーキ」 
「こんにちは、てくてくさん」 
「おいしそうなパンケーキ。そんなに急いでどこへいくの? 食べてやるから、さあ、お待ち」 
「ぼくは今、くいしんぼの七人の子どもと、お母さんと、おばあさんから逃げてきたばっかりさ。きみなんかにつかまらないぞ、てくてくさん」 
 パンケーキは、男の人からドンドン逃げていきました。 
 今度は、メンドリに会いました。 
「こんにちは、パンケーキ」 
「こんにちは、太っちょのメンドリさん」  
「おいしそうなパンケーキ。そんなに急いでどこいくの? 食べてあげるから、ちょい、お待ち」 
「ぼくは今、くいしんぼの七人の子どもと、お母さんと、おばあさんと、てくてく男から逃げてきたばっかりさ。きみなんかにつかまらないぞ。太っちょメンドリさん」 
 パンケ一キは、車のようにクルクル逃げました。 
 今度は、オンドリがやってきました。 
「こんにちは、パンケ一キ」 
「こんにちは、いばりんぼのオンドリさん」 
「おいしそうなパンケーキ。そんなに急いでどこへいくの? 食べてやるから、そら、お待ち」 
「ぼくは今、くいしんぼの七人の子どもと、お母さんと、おばあさんと、てくてく男と、メンドリから逃げてきたばっかりさ。きみなんかにつかまらないぞ。いばりんぼのオンドリさん」 
 パンケーキは、ものすごく速く逃げました。 
 今度は、アヒルがやってきました。 
「こんにちは、パンケーキ」 
「こんにちは、はらぺこアヒルさん」 
「おいしそうなパンケーキ。そんなに急いでどこへいくの?食べてあげるから、ちょっと、お待ち」 
「ぼくは今、くいしんぼの七人の子どもと、お母さんと、おばあさんと、てくてく男と、メンドリと、オンドリから逃げてきたばっかりさ。きみなんかにつかまらないぞ。はらぺこアヒルさん」 
 パンケーキは、ビュンビュン逃げました。 
 今度は、ガチョウに会いました。 
「こんにちは、パンケーキ」 
「こんにちは、よたよたガチョウさん」 
「おいしそうなパンケ一キ。そんなに急いでどこへいくの? 食べてあげるから、それ、お待ち」 
「ぼくは今、くいしんぼの七人の子どもと、お母さんと、おばあさんと、てくてく男と、メンドリと、オンドリと、アヒルから逃げてきたばっかりさ。きみなんかにつかまらないぞ。よたよたガチョウさん」 
 パンケーキは、さっさとにげました。 
 すると、一匹のブタがやってきました。 
「こんにちは、パンケーキ」 
「こんにちは、でっぷりブタさん」 
 パンケーキは、すぐに逃げ出しました。 
「おーい、待ってくれ。そんなに急がないで、いっしょに森を散歩(さんぽ)しようよ。一人より、二人の方が楽しいよ」 
(なるほど) 
と、パンケーキは思って、ブタといっしょにゆっくり歩くことにしました。 
 すると川に出ましたが、どこにも橋がありません。 
 あぶら太りのブタは、水に浮かぶので泳げます。 
 でも、パンケ一キは泳げません。 
 ブタがいいました。 
「いいこと考えたよ。ぼくの鼻の上に乗ってごらん。川を渡してあげるから」 
 パンケーキは、急いでブタの鼻の上に乗りました。 
「ブーブー」 
 ブタは喜んで鼻を鳴らすとすぐに、 
 パクン! 
と、パンケーキを食ベてしまいました。 
      おしまい 
          
         
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