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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 三つ目の大入道 
      2008年 8月30日の新作昔話 
          
          
         
  三つ目の大入道 
  京都府の民話 → 京都府情報 
       むかしむかし、京の都に、どんなことにもおどろかない侍がいました。 
         腰にはいつも、先祖から伝わる自慢の刀をさしています。 
         ある晩おそく、この侍が五条通(ごじょうどおり)を歩いていくと、後ろから足音をしのばせてついてくる者がいました。 
        「さては、あやしいやつ」 
         侍がふりかえると、まだ七つか八つの子どもでした。 
        「なんだ。化け物かと思えば子どもではないか。いまごろ、どこへいく?」 
         すると、子どもは、 
        「どこへいこうと、おらの勝手だ」 
        と、いいながら、いきなり三つ目の大入道に姿をかえました。 
        「おのれ! やはり化け物であったか。覚悟いたせ!」 
         侍は自慢の刀を抜くがはやいか、大入道にきりかかりました。 
         すると大入道は、ひょいっととびあがって、そのまま消えてしまいました。 
        「はん。口ほどもない化け物だ。あんなやつなら、いくつ出てきても平気だ」 
         侍が歩き出すと、今度は後ろからパタパタと履き物の音がして、美しい女の人がかけよってきました。 
        「お侍さま、お助けくださいまし。ただいますぐそこで大入道のお化けにあい、命からがら逃げてまいりました。途中まで、おくっていただけないでしょうか?」 
         侍は、女をひと目ながめて、 
        (これは、さっきの化け物が仕返しにきたのだな) 
        と、正体を見破りましたが、なにくわぬ顔で、 
        「いいでしょう。どこへでも、おくりましょう」 
        と、一緒に歩き出しました。 
        「ところでその大入道は、どんなやつでしたね?」 
         侍が聞くと女は立ち止まって、恐ろしそうに着物の袖で顔をかくしましたが、 
        「それは、ちょうど、このような姿でございましたよ」 
        と、いきなり三つ目の大入道になりました。 
         けれど侍は再び刀を抜きはなって、大入道にきりつけました。 
        「覚悟ー!」 
         侍が力まかせにきりつけると、ガチーンと、たしかな手ごたえがあり、刀から火花がとびちりました。 
        「さあ、しとめたぞ」 
         ところが大入道の姿は、どこにもありません。 
         侍がきりつけたのは道ばたの石どうろうで、自慢の刀は刃こぼれでボロボロです。 
        「ああ、自慢の刀が!」 
         侍はがっくりと肩を落とすと、とぼとぼと引き上げました。 
       しかし大人道の化け物も、この侍がよほど怖かったのか、それから二度と現れることはありませんでした。 
      おしまい 
         
          
         
        
       
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