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2015年3月16日の新作昔話

火消し棒

火消し棒

 むかしむかし、あるところに、もんじゃの吉という、ばくちの好きな男がいました。
 ところが好きと強いは別物で、もんじゃの吉は大負けに負けて一文無しです。

 ある日の事、もんじゃの吉は、ふと金儲けを思いついて裏山へ行き、松の大枝を切り出してきて皮をそぐと、三尺(さんしゃく→約90センチ)ぐらいの棒を作りました。
 それをきれいに磨きあげると紅を塗って、白紙にくるんで和尚さんのところへ出かけました。
 ちょうどその頃、この辺りでは火事騒ぎが続いていたので、その棒を火消し棒の神さまといって、一儲けをしようと考えたのです。

 和尚さんを訪ねたもんじゃの吉が、さっそく火消し棒を取り出してその御利益を説明すると、和尚さんはとても関心を持って、
「それでは、実際に火を消してみせてくれ」
と、言いました。
「えっ、実際にですか?」
 もんじゃの吉は仕方なく、寺の納屋(なや)からワラを出して庭に積みあげると、それに火をつけて、火消し棒をかつぎ上げては、
♪ホイサ、ホイサ
と、火のまわりを踊り歩きました。
 すると不思議な事に、本当に火が消えたのです。
 実は、その日はとても寒くてワラが凍っていたので、途中で火が消えたのでした。
 しかし和尚さんは、
「さすがは、火消し棒の神さま。すごいお力だ」
と、感心して、大金を払ってその火消し棒を買い取りました。

 さて、和尚さんは、その火消し棒を使ってみたくてたまりません。
 けれど、そんな時に限って火事は起こらないものです。
 ついにがまん出来なくなった和尚さんは、寺の納屋からワラを出して火をつけると、火消し棒をかついで、
♪ホイサ、ホイサ
と、そのまわりをぐるぐる踊り歩きました。
 ところがワラはよく燃え出して、その勢いでとうとう大事な寺だけでなく、山を丸ごと焼いてしまったのでした。

おしまい

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