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    福娘童話集 > きょうの新作昔話 > カキの精 
      2015年 9月21日の新作昔話 
          
          
         
  カキの精 
       むかしむかし、ある山里の古いお寺に、和尚さんと小僧が住んでいました。 
         このお寺には、とても甘い実をつける古いカキの木があり、毎年たくさんの実をつけるのですが、和尚さんが全部一人で食べてしまい、小僧には一つもくれません。 
         小僧は、いつも指をくわえて、 
        「ああ、いっぺんでいいから、食べてみてえなあ」 
        と、思っていました。 
         さて、今年のカキも、すっかり赤くなった秋のある晩の事。 
         小僧が、ぐっすりねむっていると、 
        「おい、小僧、起きろ!」 
        と、まくらもとで、太い声がしました。 
        「何だい、人が寝ているのに・・・。ひぇー!」 
         目をこすりながら起きた小僧の前には、何と、まっ赤な顔の大入道が立っていたのです。 
        「わあ、わあ、お助けください。ナンマンダブ、ナンマンダブ」 
         小僧が手をあわせると、 
        「小僧、おぜんを持って来い!」 
        と、大入道がどなりました。 
         そこで小僧が自分のおぜんを持ってくると、大入道はおぜんの上で、くるりと尻まくりしたかと思うと、ブリブリッと、赤いうんちを出したのです。 
        「小僧、なめてみろー」 
        「ええーっ!」 
         小僧はびっくりしましたが、殺されるよりはましだと思って、仕方なく指の先に、それをちょっとつけてなめてみました。 
        「・・・うん。おいしい!」 
         これが、舌もとろけそうなほどおいしいのです。 
         小僧は恐ろしいのも忘れて、赤いうんちを全部なめてしまいました。 
        「もっと、なめさせてくれ」 
         小僧は、大入道にねだりましたが、 
        「さっきので全部だ。そうは出せねえ」 
        と、大入道は庭の方へ出て行って、それっきり現れませんでした。 
        「あーあ、うまかった。あんな化け物なら、毎晩でも出てもらいてえなあ」 
         次の朝、小僧が夜中の出来事を話すと、和尚さんはこう言いました。 
        「それは、庭のカキの木の精にちがいない。いつもわしばかりカキの実を食べてしまうので、カキの精がお前の事を気の毒に思って、最後に残った実をくれたのだろう。すまんかったな。来年からは、お前にもわけてやろうな」 
       こうして小僧は、来年からカキを食べる事が出来たそうです。 
      おしまい 
         
          
         
        
       
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