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2016年 3月 7日の新作昔話
親切なおじいさん
むかしむかし、あるところに、とても親切なおじいさんとおばあさんが住んでいました。
ある日の事、おじいさんが山の中を歩いていると、谷川の岸に出ました。
その川の向こうで、
「あぶない、あぶない」
と、大声で呼ぶものがあります。
おじいさんは、びっくりして、
「あぶないなら、助けてやろう」
と、声のする方を見ましたが、だれが呼んでいるのかわかりません。
そこで、こっちから、
「おーい」
と、呼んでみましたが、返事はありません。
「おかしいな。谷川の水の音か、林の風の音を聞き違えたかな?」
おじいさんはそう思って、その日は帰ることにしました。
ところが次の日も、そこを通ると、
「あぶない、あぶない」
と、声がするのです。
おじいさんは心配になって、あちこちを探してみましたが、誰一人見つかりません。
「誰だ。助けにきたぞー!」
そう呼んでみても、返事はありません。
おじいさんは、年のせいで聞き違いをしたかと思いました。
さて、その次の日の事です。
おじいさんは、今日こそ聞き違いをしないようにと、よく気をつけていました。
すると、また声がします。
今日は、本当にあぶなそうに聞こえました。
おじいさんは、大急ぎで川を渡っていきました。
しかし、だれが呼んでいるのかわかりません。
あきらめて引き返そうとすると、今度は、すぐそばで、
「あぶない、あぶない、あぶない」
と、呼ぶ声がしました。
見ると、それは一つのつぼで、今にも川の中へ落ちそうになっていました。
「そうか、あぶないとは、これのことだな」
おじいさんは、急いでそのつぼを抱き起こしてやりました。
すると、
「ありがとう」
と、つぼの中から、小さな声が聞こえました。
おじいさんは中に何かいるのだろうと思って、つぼのふたをとってみたら、なんと中にはたくさんのお金が詰まっていたのです。
それから、おじいさんとおばあさんは、そのお金で幸せに暮らす事が出来ました。
おしまい
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