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福娘童話集 > きょうの新作昔話 >かみのない所
2016年 9月19日の新作昔話
かみのない所
江戸小話 → 江戸小話
むかしむかし、小僧さんと和尚さんの二人が村へ出かけた帰り道です。
小僧さんは急に、おしっこがしたくなりました。
どこかに便所を貸してくれる家がないかと探しますが、あいにくと周りは畑ばっかりです。
小僧は仕方なく、道ばたでおしっこをしようとしました。
すると、和尚さんが言いました。
「これ、そんなところへ小便をするとバチがあたるぞ。道には、道の神さまがいなさるのじゃ」
「はい、わかりました」
小僧さんはおしっこをがまんしながら歩き続けましたが、やっぱりがまんが出来なくなり、今度は畑に向かっておしっこをしようとしました。
「これこれ、畑には畑の神さまがいなさるのじゃ。がまんしなさい」
「・・・はい、わかりました」
またしかられた小僧さんが、歯をくいしばって歩きつづけると川がありました。
(川なら水だし、大丈夫だろう)
そう思った小僧さんが安心しておしっこをしようとすると、またまた和尚さんが言いました。
「これこれこれ、川には水の神さまがいなさるのじゃ。もう少しの間じゃ、がまんしなさい」
「・・・はい」
小僧さんは股を手で押さえながら歩き続けましたが、もう我慢が出来ません。
そこで今度は、目の前にあった石の地蔵さんに向かうと、あわてた和尚さんが大声で怒鳴りました。
「このバチ当たりめ! よりにもよって、お地蔵さまに小便を引っかけるとは何事だ!」
すると、たまりかねた小僧さんが言いました。
「それでは、どうすればいいのですか?」
「神のない所へしなさい」
それを聞いた小僧さんは、いきなり和尚さんに向かっておしっこをはじめました。
「これ、だから道には、道の神さまが、・・・うわっ、こらっ、止めろ。わしにかかるではないか!」
あわてた和尚さんは、足をすべらせてスッテンコロリン。
でも小僧さんはかまわず、和尚さんの頭にジャージャーとおしっこをかけました。
「ぺっ、ぺっ。お前というやつは、何というやつじゃ! よりにもよって、人の頭に小便をかけるとは」
すると小僧さんは、すっきりした顔で言いました。
「はい、言われた通り、かみ(髪)のない所ですませました」
おしまい
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