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2016年 9月26日の新作昔話
雷さまの寝坊
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むかしむかし、お日さまとお月さまと雷さまが、三人で旅に出ました。
夕方になったので、三人は宿屋に泊まりました。
そしてお風呂もご飯もすませた三人は、
「今夜は、ぐっすりと寝よう」
と、まくらを並べてふとんに入りました。
次の朝。
すっかり寝坊をした雷さまがようやく目を覚ますと、お日さまのふとんも、お月さまのふとんも片付けられていました。
「あれ、誰もいない」
不思議に思った雷さまは、宿屋の主人に尋ねました。
「あの、一緒に泊まった二人は、どこへ行きました?」
「はい、お二方でしたら、もうとっくにたたれましたよ」
「えっ、もうたったって? むかしから『月日のたつのははやいもの』というが、まったくその通りだな」
「それではお客さんも、すぐにおたちになりますか?」
「いや、今から二人のあとを追いかけても、間に合うまい」
「では雷さまは、何時頃のお出かけになりますか?」
「そうだな。わしは、ゆうだちにするよ」
雷さまはそう言って横になると、ゴロゴロといびきをかいて、もうひとねむりしたそうです。
おしまい
※ ゆうだちは、夕方に出発する意味と、夕立(昼過ぎから急に天気が変わって、大雨や雷になる)の引っかけ。
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