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2017年 6月19日の新作昔話
石垣の三日修理
豊臣秀吉の出世物語
ある大雨で、お城の石垣の一部が崩れてしまいました。
石垣は、城を支える重要な部分です。
早く修理をしなければなりませんが、どの家来に修理を命じても要領が悪くてなかなか工事がはかどりません。
「石垣の修理に、一体何日かかっておる! いま敵に攻められたら、どうするつもりだ!」
真っ赤な顔で怒る信長に、日吉丸が言いました。
「殿、石垣の修理を、この日吉丸にお命じくだされ!」
「サルが出しゃばるな!」
信長は、日吉丸を一喝しました。
身分の低い日吉丸が重要な石垣の修理をするなんて、当時では考えられない事だからです。
でも日吉丸は、簡単には引き下がりません。
(殿が怒るのはもっともだが、こう言うところで実力を見せないと、いつまでたっても出世出来ないからな。ここは一つ、賭に出るか)
考えた日吉丸は、信長が興味の引きそうな言い方をしました。
「この石垣修理は、普通なら後七日はかかる仕事。ですが、日吉丸にお任せくだされば五日間で、・・・いいえ、三日間で仕上げましょう」
「ほう」
日吉丸の予想通り、信長が興味を示しました。
「サル、今、三日と申したか。面白い、ではやってみよ」
こうして信長の許しを受けて石垣修理の責任者になった日吉丸は、石垣修理に集まった者達の仕事ぶりを見てびっくりです。
(何だ? このやる気のなさは。
石垣修理が重要な仕事である事が、分かっていないのか?
・・・ああ、そうか。
仕事を続けている間は食う物に困らんから、わざと仕事をだらだらと引き伸ばしているのだな。
全く、困ったものだ。
特にあいつなどは、どうどうと仕事をさぼっているし。
・・・さて、こいつらに仕事をさぼらせず、やる気を出させるには)
そこで日吉丸は、仕事をしている者達をいくつもの班に分けました。
大人数で仕事をさせるとさぼっても目立ちませんが、少人数の班だとさぼると目立つので、みんな真面目に働きました。
そしてさらに日吉丸は、仕事を早くすませた班にほうびをとらせる事にしました。
するとどの班もほうびをもらおうと頑張りだし、工事がどんどん進みます。
そして約束通り、日吉丸は石垣修理を三日で終わらせたのです。
それからも日吉丸はこんな調子でどんどん手柄を立てて、小者から小者頭に、足軽から足軽大将へと、異例なスピード出世をしていきました。
おしまい
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