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2017年11月 6日の新作昔話

カメがウサギに勝つ方法

カメがウサギに勝つ方法
イソップ童話 → イソップ童話とは?

「だから止めときなって言ったのにぃ」
 山の頂上でウサギはカメに言いました。
「足の速いボクに、お世辞にも速いとは言えない君の足で、競争して勝てる訳がないじゃないか」
 のそのそと歩いてるカメの横で、歩調を合わせるように、ウサギが歩きながら話しかけてきました。
 カメは勝ち誇った顔をしているウサギをチラっと見て、
「ウサギさん、競争はまだ終わっていませんよ」
 と、足を止めずに続けました、
「約束しましたよね、往復して早く着いた方の勝ち、って」
 山のふもとからスタートして山を登り、頂上にある木を回ってスタート地点に戻る、という競争を二人はしていたのでした。
「あぁ、そうだねぇ、確かに競争は終わってない」
 ウサギはあきれた表情を受けべて続けました。
「でもねカメくん、ボクは折り返し地点の頂上で、キミがくるまで一時間も待ってたんだよ、途中で昼寝しても、まだ来ないんだもの退屈しちゃったよ」
 ウサギは肩を大げさにすぼめました。

 どう考えても勝負にならなそうな競争ですが、そもそも、なんで、こんな競争が始まったのでしょう。
 まず、ウサギがカメの足の遅さをバカにしたことが始まりでした。
 怒ったカメに、だったら勝負しようと、ウサギが言いました。
 カメは勝負を受けました。
 ただし、ルールは自分が決めると言いました。
 どうしたって勝つのは決まっている、と思ったウサギはカメのルールに従い、競争が始まったのでした。

 カメは無言で、のそのそと歩いて、木を回り折り返しました。
 ウサギは、その頑固なカメの姿を見て、軽く息を吐きました。
「カメくん、キミって奴は素直じゃないねぇ……、まぁ、いいでしょう。先に行って、ふもとで待ってるよ」
 と、ウサギは軽快な足取りで木を回り
「一時間後に、また会おう!」
 と、カメを追い抜いていきました。
 カメは、ウサギの後ろ姿を眺めながら、のそのそと歩きました。
 やがて下り坂に差し掛かりました。
 するとカメは、段々と小さくなって行くウサギの後ろ姿に向かって、ニヤリ、と笑みを浮かべました。
(ボクはこの時を待っていたんですよウサギさん)
 カメはウサギの後ろ姿から目線を外し、進行方向に対して体を横向きにしました。
(あなたが頂上付近でわざわざ待っていて、ボクをバカにすることも分かっていました)
 横を向いたカメ。
(すべては計画通り)
 左が頂上側、右がふもと側、道は下り坂です。
(このルールを、あなたがのんだ時点で、ボクの勝ちなのです)
 右側の足を二本、甲羅の中に静かにしまいました。
(カメに、頭で勝とうなんて、100万年早いですね)
 頂上側にある左の足二本に力を入れました。
「せ〜の、よっ」
 体が、右の方、つまり、坂の低い方に傾き始めました。
 そして、くるりと一回転。
「もう一回、せ〜の、よっ」
 足を使って、コロリン一回転、
 テンポよく足を使ってもう、コロコロリン二回転、
 リズムに乗ってもうコロコロコロリン三回転、
 だんだんと下り坂で加速がついて、とうとう足を使わなくても回転し続けるようになり、全部の足を甲羅の中にしまいました。

 その頃、ウサギは全く力を出さずに、のんきに歩いて平然と山を下っていました。
 この速さでも勝利は約束されていました。
 退屈で、眠くなりそうです。
 ───コロコロ
 何やら後ろから音がします。
 コロコロコロ
 石でも転がって来たのかな?
 と、ウサギが振り向こうとした瞬間、
 コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ!
 体の横を、物凄い勢いで何かが転がって行きました。
「───── へ?」
 ウサギは呆気にとられました。
 が、次の瞬間、カメだと気付きました。
「ちょっと、カメくん」
 ウサギは慌てて全力で走りました。
 コロコロコロコロコロコロ!
「ちょっと、ちょっと、ちょっと、ちょっと」
 全力で走っても、カメとの距離は縮まりません。
 コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ!
「ちょっと、ちょっと、ちょっと、カメくん」
 ウサギは、力を振り絞って速く走りました。
 コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ!
「ちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょ」
 ウサギの足の速さも大したもので、徐々に転がっているカメに近づいて行きました。
 そうこうしているうちに、あっという間に、ふもとのスタート地点が見えてきました。
 ウサギは歯を食いしばって、出せる力を精一杯足に込め走りました。
 あとちょっとで、転がっているカメに追いつきそうでした。
 ウサギは目を、ギューッとつむり、力を振り絞りました。
 しかし、さすがに全力で走り続けるのには、限界がありました。
 ついに、スタート地点の手前で失速してしまい、カメに先を越されてしまったのでした。
 コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ!
 スタート地点に先に戻ったのはカメでした!
 カメは、全力で走るウサギに勝つことができたのです!!

 ウサギはスタート地点に倒れ込み、ゼーェ、ゼーェ、と激しく息をしました。
 そして、しばらくして、カメの姿を探しました。
 しかし、ウサギが周りを見渡しても、カメの姿は見えませんでした。
「あれ〜、カメくん?」
 目を凝らして、よーく先の方を見ると、まだまだ勢いよく転がっているカメの姿を見つけました。
「おーい、カメくーん、どこへ行くんだーい」
 ウサギは転がっているカメにはどうせ聞こえないだろうと思い、独り言のように小さく呟きました。
「カメくん、あれじゃ海まで行っちゃうね」
 転がっているカメの姿を眺めながら、ウサギは耳をすませました。
(誰か、止めてーーーーーーーーーーーーーーぇ!!!!!)
 と叫んでいる、カメの声が聞こえたような気がしました。
 コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ

おしまい

このお話は、赤原充浩さんからの投稿作品です。

運営サイト : 童話でHappy♪



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