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2017年12月18日の新作昔話
鯛と酒樽の絵手紙
日本昔話
むかしむかし、ある村に、字を知らない男がいました。
ある日、この男が立派な鯛(たい)を二匹と酒樽を手に入れたので、隣村に住んでいる弟を家に呼んで鯛と酒をご馳走してやろうと思いました。
そこで隣村へ行く人に手紙を預けて、隣村の弟に渡してもらう事にしました。
しかし手紙と言っても男は字を知らないので、その手紙は字の手紙ではなく絵の手紙です。
男は鯛の絵と酒樽の絵を手紙に書きました。
(少し絵は下手だが、鯛も酒も弟の大好物。この絵を見ればすぐにやって来るだろう)
やがて隣村からやって来た人から、弟は兄からの手紙を受け取りました。
「ほう、兄さんから手紙とは珍しい。しかし兄さん、字を書けないはずなのに」
弟が手紙を開くとタイと酒樽の絵が描いてありましたが、絵が下手なので弟にはそれが鯛と酒樽に見えません。
「何だこの下手くそな絵は? この長細い物は、・・・葉っぱか? ゴボウかタバコの葉っぱだな」
弟は鯛の絵を、ゴボウかタバコの葉っぱと勘違いをしました。
「そしてこの入れ物の様な物は、・・・こやしを入れるおけだな」
弟は酒樽を、こやしを入れるおけと勘違いをしました。
「ゴボウの葉とタバコの葉っぱに、こやしを入れるおけと言う事は・・・」
弟は一生懸命に考え、ある答えを導き出しました。
「分かったぞ! ゴボウ畑とタバコ畑にこやしをまくから、手伝いに来いと言うのだな! ご馳走してくれるのならともかく、こっちも畑仕事で忙しいのに手伝いに来いとはとんでもない兄だ!」
怒った弟は手紙をビリビリに破いてしまい、せっかくのご馳走を食べ損ねてしまいました。
おしまい
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