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2018年3月19日の新作昔話 朗読付き改訂版
くわが盗まれた
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むかしむかし、仲の良いお百姓の兄弟が、二人で畑を耕していました。
やがてお昼になり、お兄さんは先に帰って食事の用意を始めました。
そして食事の用意が出来たので、弟に大きな声で言いました。
「おーい! 帰ってこ〜い!」
すると弟も、大きな声で返事をしました。
「わかったー! くわを隠してから、帰るよー!」
二人がテーブルにつくと、お兄さんが弟に言いました。
「弟よ、物を隠す時は、あんなに大きな声で言うものじゃない。
誰かに聞かれて、隠した物を盗まれたらどうする?
今度から大声は、よく考えてから使うんだぞ」
兄さんに注意されて、弟はなるほどと思いました。
(よし、これからは注意をしよう)
さて、食事がすんで弟が畑へ行ってみると、ちょうど誰かが隠しておいたくわを盗もうとしているところでした。
(大変だ! すぐに兄さんに知らせないと!)
弟はすぐに大声を出そうと思いましたが、はっと、お兄さんから聞いた注意を思い出して小さな声で言いました。
「兄さん、くわが盗まれようとしているよ」
しかしそんな小さな声では遠くにいるお兄さんには聞こえないので、弟は仕方なく急いで家に帰ると、お兄さんの耳に口を寄せてそっとささやきました。
「兄さん、くわが盗まれてしまったよ」
大きな声と小さな声は、時と場合で使い分けましょう。
おしまい
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