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2019年7月22日の新作昔話

さとりのばけもの

さとり

♪音声配信(html5)
朗読者 ; ☆横島小次郎☆

 むかしむかし、木こりが山に小屋を立てて、毎日毎日オノをふるっていました。

 ある日、木こりが木を切っている途中で日が暮れてしまいました。
「仕方ない。今夜はここで野宿をするか」
 木こりが枯れ枝を拾い集めて、たき火をしていると、
 ガサガサ、ガサガサ。
と、クマザサをかきわけて、ひとつ目の一本足が現れました。
 一つ目の一本足はたき火のそばに来ると、黙って手をあぶりはじめます。
(何だ、この化け物は?)
 木こりがそう思うと、ひとつ目の一本足がにやりと笑って言いました。
「今、お前が何を思ったか、当ててやろう。
『何だ、この化け物は?』
 そう思っただろう」
 ひとつ目の一本足は、見事に言い当てました。
(こいつは、おれの思う事がわかるのか? こいつはうわさに聞く、さとりの化け物かもしれん)
 木こりがそう思うと、ひとつ目の一本足が言いました。
「お前、『こいつは、おれの思う事がわかるのか? こいつはうわさに聞く、さとりの化け物かもしれん』と、思ったろう」
 またまた、言い当てました。
(こんな化け物に、構ってはおられん)
 木こりが逃げ出そうとすると、ひとつ目の一本足がまた言いました。
「今、『こんな化け物に、構ってはおられん』と、思ったろう」
 怖くなった木こりが、
(こんな化け物、はやく帰ればいいが)
と、思うと、ひとつ目の一本足はまた言いました。
「今、『こんな化け物、はやく帰ればいいが』と、思ったろう」
(何とかして、こいつを追い返す方法はないだろうか?)
 木こりが考えていると、たき火の火の粉がパチーンとはじけ飛んで、ひとつ目一本足の大きな目玉に飛び込みました。
 ひとつ目の一本足は、びっくりして飛び上がると、
「あちちちちっ! 人間て、思わん事もするもんだ。危なくて、こんなところにはおられん」
と、あわてて山へ逃げていきました。

おしまい

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