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2022年8月1日の新作昔話

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
親指姫 アンデルセン童話
イラストレーター: かみしばいサーカス かみしばいサーカス

親指姫
アンデルセン童話 → アンデルセン童話の詳細

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投稿者 「久瑠璃桜華」  久瑠璃桜華

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投稿者 「かみしばいサーカス」  かみしばいサーカス

英語バージョン

投稿者 「かみしばいサーカス」  かみしばいサーカス

♪音声配信(html5)
音声 : ことば工房  BGM:フリー音楽素材 H/MIX GALLERY様(http://www.hmix.net/

♪音声配信(html5)
音声 創作活動のサイト 『Web団 零点』

♪音声配信(html5)
音声 得本綾(コトリボイス) ラジオHP

 むかしむかし、一人ぼっちの女の人が、魔法使いにお願いしました。
「わたしには、子どもがいません。小さくてもかまわないので、可愛い女の子が欲しいのです」

親指姫 アンデルセン童話

 すると魔法使いは、種を一粒くれました。
「これを育てれば、願いがかなうだろう」
 女の人が種をまくと、たちまち芽が出てつぼみが一つふくらみました。
「まあ、何てきれいなつぼみでしょう」

親指姫 アンデルセン童話

 女の人が思わずキスをすると、つぼみが開きました。
 すると、どうでしょう。
 そのつぼみの中に、小さな女の子が座っていたのです。

親指姫 アンデルセン童話

 女の人は、その小さな女の子にキスをしました。
「はじめまして。あなたの名前は、親指姫よ」
 女の人は小さな親指姫を、それはそれは大切に育てました。

 親指姫はお皿のプールで泳ぎ、葉っぱの舟をこぎながらきれいな声で歌いました。

親指姫 アンデルセン童話

 そして夜になると、クルミのからのベッドで眠ります。
 おふとんは、花びらでした。

 さて、ある晩の事です。
 ヒキガエルのお母さんが、寝ている親指姫を見つけました。

親指姫 アンデルセン童話

「あら可愛い。息子のお嫁さんに、ちょうどいいわ。ゲロゲロ」
 ヒキガエルのお母さんは親指姫を連れていくと、スイレンの葉っぱに乗せました。
「さあ、起きるんだよ。
 今日からお前は、わたしの息子のお嫁さんだよ。
 そしてこの沼が、お前の家さ。
 いいところだろ。
 息子を連れて来るから、ここにいるんだよ。ゲロゲロ」

親指姫 アンデルセン童話

 ヒキガエルのお母さんは、そう言ってどこかへ行ってしまいました。
 一人残された親指姫は、シクシクと泣き出しました。
「ヒキガエルのお嫁さんなんて、いやよ。ドロの沼も、きらいだわ」
 すると、その声を聞いた魚たちが集まり、

親指姫 アンデルセン童話

「かわいそうに、あのヒキガエルお嫁さんだなんて」
「ねえ、逃がしてやろうよ」
と、スイレンのくきをかみ切ってくれました。
「ありがとう。魚さん」
 くきを切られたスイレンの葉っぱは、水の流れに流れていきます。
 親指姫は飛んでいたチョウチョウにお願いして、葉っぱを引っ張ってもらいました。

親指姫 アンデルセン童話

 チョウチョウのおかげで、葉っぱはどんどん川を下っていきます。
 するとそれを、コガネムシが見つけました。

親指姫 アンデルセン童話

「おや、珍しい虫がいるぞ」
 コガネムシは親指姫を捕まえると、森の奥へと連れて行ってしまいました。
 おかげで親指姫は、森の奥で一人暮らしです。
 親指姫は花のミツを食ベて、草にたまったつゆを飲んで、葉っぱにくるまって眠ります。

親指姫 アンデルセン童話

 やがて冬がきて、空から雪が降ってきました。
「ああ、何て寒いのかしら」

親指姫 アンデルセン童話

 寒さに震えながら歩いていた親指姫は、野ネズミの家を見つけました。
「あの、寒さで困っています。どうか、中へ入れてくれませんか?」
 親指姫が声をかけると、野ネズミのおばさんが出てきて言いました。
「おやおや、かわいそうに。さあ、中はあったかいし、食ベ物もたくさんあるよ。遠慮せずに、いつまでもいるといいよ」

親指姫 アンデルセン童話

 こうして親指姫は、野ネズミのおばさんと一緒に暮らす事になりました。

 さて、野ネズミの家のさらに地面の奥には、お金持ちのモグラが住んでいました。
「なんて可愛い娘だろう」

親指姫 アンデルセン童話

 親指姫を気に入ったモグラは、毎日遊びにきます。

 ある日の事、親指姫はけがをして倒れているツバメを見つけました。
 やさしい親指姫は、毎日ツバメの世話をしました。

親指姫 アンデルセン童話

「どうか元気になって、もう一度歌って。わたし、あなたの歌が大好きよ」
 春になり、すっかり元気になったツバメが親指姫に言いました。
「あなたのおかげで、また飛べるようになりました。さあ、一緒に南の国へ行きましょう。南の国は、とってもいいところですよ」
「ありがとう。でも、いけないわ」
「どうして?」
「だって、わたしがいなくなったら、お世話になった野ネズミのおばさんがさびしがります」
「・・・そうですか。では、さようなら」

親指姫 アンデルセン童話

 ツバメは親指姫に礼を言うと、南の国へ飛んでいきました。

 夏が来ると、野ネズミのおばさんが言いました。
「親指姫や、いい話ですよ。
 なんとお金持ちのモグラさんが、あなたをお嫁に欲しいんですって。
 よかったね、モグラさんに気に入ってもらって。
 秋になったら、モグラさんと結婚するのですよ」
 親指姫は、ビックリしました。

親指姫 アンデルセン童話

 モグラはきらいではありませんが、モグラと結婚したらずっと地面の底で暮らさなければなりません。
 モグラは、お日さまも花も大きらいだからです。

 夏の終りの日、親指姫は野原で言いました。

親指姫 アンデルセン童話

「さようなら、お日さま。
 さようなら、お花さんたち。
 わたしは地面の底に行って、もう二度とあなたたちに会えません」
 親指姫は悲しくなって、泣き出しました。
 その時、空の上から聞き覚えのある声が聞こえました。
「親指姫。お迎えに来ましたよ」

親指姫 アンデルセン童話

 あの時助けたツバメが、飛んできたのです。
「聞きましたよ、モグラがあなたをお嫁さんにしたいと。さあ、今度こそ一緒に行きましょう」
「ええ、行きましょう」

親指姫 アンデルセン童話

 ツバメは親指姫を背中に乗せて、大空を飛んでいきました。
 何日も何日も南へ飛んで、着いたのは花の国です。
 ツバメは花の上に、親指姫をおろしました。
 花の上には、親指姫と同じくらいの大きさの男の子が立っていました。
「ようこそ、かわいい娘さん」
 この男の子は、花の国の王子さまです。
「さあ、これをどうぞ」
 王子さまは、親指姫の背中に羽をつけてくれました。

親指姫 アンデルセン童話

 それから親指姫は、花の国の王子と結婚しました。
 二人は花から花へと飛びまわりながら、いつまでも幸せに暮らしました。

おしまい

親指姫 アンデルセン童話

→ フルバージョン 「親指姫」

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