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2022年12月5日の新作昔話
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
イラスト 朗読パーク NPO声物園チャンネル
宝来る水
岡山県の民話 → 岡山県の情報
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語り 「町田政則」 「朗読パーク NPO声物園チャンネル」
むかしむかし、大変縁起を担ぐ長者がいました。
ある大晦日の晩、長者は下男を呼んで言いつけました。
「明日は正月だから、早起きして若水(わかみず)を汲んでおくように」
すると下男は、首をかしげて言いました。
「はて? 旦那さま、若水とは、どんな物でしょう?」
「なんじゃ、お前は若水を知らんのか?
いいか、若水というのは新年の最初に汲む水の事で、病気や災いなどの邪気を追い払うと言われておる。
この家では代々、川に塩をまいてお清めしてから汲んでおるのじゃ。
わかったか?」
「へえ、わかりやした」
夜が明けて、正月の元旦になりました。
「よーし、若水を汲むぞ!」
下男が張り切って外に出ると、外は昨夜からの雪が降り積もって足のすねまで隠れる大雪でした。
「困ったな。こんなに足下が悪くては、川にはまってしまうぞ」
どうしようかと考えていると、ちょうど田んぼのふちから水が出ているのに気づきました。
「よし、あれがよかろう」
こうして下男はその水を汲んだのですが、その様子を女中が見ていて長者に知らせたのです。
「旦那さま。ただいま戻りました」
下男が長者に挨拶をすると、長者は怖い顔で下男をにらみつけました。
「こら! お前、今、何をしていた!!」
「何って、旦那さまに言われて、若水を取りに行った帰りですが」
「何が、若水だ!
女中から聞いたが、お前は近くの田んぼの水を汲んだそうじゃないか。
この、あほう!
新年早々、縁起でもない!
ええい、お前みたいなやつは、この屋敷には置いておけん。
今すぐ、出て行け!」
長者はカンカンになって怒りましたが、下男はけろりとした顔で言いました。
「旦那さま、それは考え違いです。わしは縁起が良いと思い、田から来る水を汲んで来たのです」
「どこが、縁起が良いんじゃ! よりにもよって、若水を田んぼから汲んでくるなんて!」
「いえいえ、そうじゃありません。旦那さま、いいですか? 田から来る水は、つまり、宝来る水です」
「うん? 田から来る水は、宝来る水?」
長者はしばらく考えていましたが、ようやく意味がわかって、ポンと手を叩きました。
「おお、そうか。
田から来る水は、宝来る水。
つまり、お宝が来る水という訳か!
うむ、確かにこれは、縁起の良い若水じゃ」
縁起を担ぐ長者は大喜びで、下男にたくさんのお年玉をあげました。
おしまい
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