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福娘童話集 > きょうの新作昔話 >幸せの王子

2023年2月27日の新作昔話

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

制作: 世界名作福袋   朗読 : 劇団SHOWA ひろみ&ポポコ  絵 : Taku

地の文: ひろみ・ポポコ・ひろみ・ポポコ ………

ツバメ:ひろみ 王子:ポポコ 貧しい若者:ひろみ 神様:ポポコ

おりがみをつくろう ( おりがみくらぶ より)
つばめの折り紙つばめ

♪音声配信(html5)
朗読 : ことば工房
音楽著作:フリー音楽素材 H/MIX GALLERY  効果音著作:民潭/ポケットエポックメカニワ機械庭工房

♪音声配信(html5)
朗読 : ヒビキ

♪音声配信(html5)
朗読 : 琵琶  運営サイト : 琵琶(びわ)

♪音声配信(html5)
朗読 : 佐々木久美子

♪音声配信(html5)
音声 ゲスト参加

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幸せの王子

 むかしむかし、ある町には、美しい『しあわせの王子』の像(ぞう)がありました。

幸せの王子

 その『しあわせの王子』の体には、金色に光かがやく金ぱくが貼ってあります。
 青いひとみはサファイアで、腰の剣には大きいルビーがついています。
 町の人たちは、このすばらしい王子のようにしあわせになりたいと願いました。

 冬が近づいてきた、ある寒いタ方の事です。
 町に、一羽のツバメが飛んで来ました。
「ふうーっ。ずいぶんと、遅れちゃったな。みんなはもう、エジプトに着いたのかなあ?
 今日はここで休んで、明日旅に出よう」
 ツバメはしあわせの王子の足元にとまり、そこで眠ろうとしました。

幸せの王子

 するとポツポツと、しずくが落ちてきました。
「あれれ、雨かな? 雲もないのに、変だな。・・・あっ、王子さまが泣いている。もしもし、どうしたのですか?」

幸せの王子

 ツバメがたずねると、王子が答えました。
「こうして高い所にいると、町中の悲しい出来事が目に入ってくるんだ。でもぼくには、どうする事も出来ない。だから泣いているんだよ」
「悲しい出来事?」
「ほら、あそこに小さな家があるだろう。子どもが病気で、オレンジが食べたいと泣いている。お母さんは一生けんめい働いているが、貧しくて買えないんだ」
「それは、お気の毒に」
「ツバメくん、お願いだ。ぼくの剣のルビーを、あそこへ運んでおくれよ」
「うん。わかった」

 ツバメは王子の腰の剣のルビーをはずして、熱で苦しんでいる男の子のまくらもとにルビーを置きました。

幸せの王子

「つらいだろうけど、がんばってね」
 ツバメはつばさで、男の子をそっとあおいで帰ってきました。
 王子のところへ帰ってきたツバメは、ある事に気づきました。
「不思議だな。こんなに寒いのに、なんだか体がポカポカするよ」
「それは、きみが良い事をしたからさ。ツバメくん」

 次の日、王子はまたツバメに頼みました。
「ぼくの目のサファイアを一つ、才能のある貧しい若者に運んでやってくれないか?」
「でもぼく、そろそろ出発しなくちゃ」
「お願いだ。きょう一日だけだよ。ねえ、ツバメくん」
「・・・うん」
 ツバメがサファイアを運んでやると、若者は目を輝かせて喜びました。

幸せの王子

「これでパンが買える! 作品も、書きあげられるぞ!」

 次の日、ツバメは今日こそ、旅に出る決心をしました。
 そして王子に、お別れを言いました。
「王子さま。これからぼくは、仲間のいるエジプトに行きます。エジプトはとてもあたたかくて、お日さまがいっぱいなんです」
 けれど王子は、また頼みました。

幸せの王子

「どうか、もう一晩だけいておくれ。あそこで、マッチ売りの女の子が泣いているんだ。
 お金をかせがないとお父さんにぶたれるのに、マッチを全部落としてしまったんだ。
 だから残ったサファイアを、女の子にあげてほしいんだ」
「それでは、王子さまの目が見えなくなってしまいますよ」
「いいんだ。あの子がしあわせになれるのなら、目が見えなくとも」
「王子さま・・・」
 人のしあわせのために自分の目をなくした王子を見て、ツバメは決心しました。
「王子さま、ぼくはもう旅に出ません。ずっと、おそばにいます。そして、王子さまの目の代わりをします」
「ツバメくん。ありがとう」

 それからツバメは町中を飛び回り、貧しい人たちの暮らしを見ては王子に話して聞かせました。
「それでは、ぼくの体についている金を全部はがして、貧しい人たちに分けてくれないか」
「わかりました」
 ツバメは言いつけ通り王子の体から金ぱくをはがすと、貧しい人たちに届けてやりました。

 やがて、空から雪がまい落ちてきました。

幸せの王子

 とうとう、冬がきたのです。

 さむさに弱いツバメは、こごえて動けなくなりました。
「ぼくは、もうだめです。王子さま、さようなら。良い事をして、ぼくはしあわせでした」
 ツバメは最後の力で王子にキスをすると、そのまま力つきて死んでしまいました。
 パチン!

幸せの王子

 その時、王子の心臓(しんぞう)が悲しみにたえかねて、はじけてしまいました。

 次の朝、町の人たちはしあわせの王子の像が、すっかり汚くなっているのに気づきました。
「美しくない王子なんか、とかしてしまおう」

 ところが不思議な事に、王子の心臓だけはどんなにしてもとけませんでした。
 そこで王子の心臓は、そばで死んでいたツバメといっしょにすてられました。

 そのころ、神さまと天使(てんし)がこの町へやってきました。
「天使よ。この町で一番美しい物を持っておいで」
 神さまに言いつけられて天使が持ってきたのは、王子の心臓とツバメでした。
 それを見て、神さまはうなずきました。
「よくやった。これこそが、この町で一番美しい物だ。王子とツバメは、大変良い事をした。この二人は、天国に連れて帰ってやろう」

幸せの王子

 こうして人々を助けるために死んだ王子とツバメは、天国でしあわせに暮したのです。

幸せの王子

おしまい

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