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福娘童話集 > きょうの新作昔話 >神さまの像を運ぶロバ

2023年10月23日の新作昔話

町のネズミと田舎のネズミ
制作 「ハブルータ・Havruta


神さまの像を運ぶロバ

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

制作 「ハブルータ・Havruta

 背中に大きな荷物を積んだ一頭のロバが、主人にひかれて歩いています。
 今日の仕事は、この荷物を町の神殿まで運ぶことでした。

 町に入ると、人々がロバに向かって頭をさげ、両手を合わせて拝んできます。
「ぼくに向かって拝んでいるの?」
 不思議に思いながら歩きました。
 それでも、来る人来る人 頭をさげて拝むので、何だか気分が良くなって、ロバはその気になっていきました。
「きっと ぼくは すごいんだ!」
 そして、ついには 足を止め、
「ぼくは、荷物を運ぶようなロバじゃない」
 そう言って、あばれて荷物を振り落とそうとしました。
 主人はロバを なだめながら 言いました。
「おいおい、何をかん違いしてるんだ。
 町の人は、お前が背中に乗せている 神様の像に 頭をさげているんだよ」
「えっ‼」
 ロバはピタッとあばれるのをやめました。
「ぼくを拝んでいたんじゃなかったの⁈ そうだよね、そんなわけないよね…」
 がっくりとして、足早にその場を去りました。
 ロバは、神殿までの道のりを ポックリポックリ歩きました。
 道ばたの小さな花が、ロバに向かってあいさつをします。
「こんにちは」
 道の石だたみも、あたたかな太陽も、あつまっているハトたちも、
 いつもと変わらず、ロバに親しく声をかけてくれます。
「重たそうね、がんばってね」
 背中に神様を乗せていると思ったら、〝傷つけたら大変″と、いつもよりも気をつけて歩きました。
 やっと神殿に到着し、神様の像をおろしたロバは ほっと一安心。
「神様、さっきは 振り落とそうとして ごめんなさい。
 でも、こうやって無事にお届けできて 良かったです」
 ロバは、にっこりとおじぎをして、帰っていきました。

 その夜、疲れた体を休めていると、不思議な夢をみました。
「今日はありがとう。私を大切に運んでくれて ありがとう」
 そう言いながら 神様が、ロバに深々と頭をさげるのです。
 ロバは おどろきました。
「こんなぼくに、頭をさげてくださる神様なんですね。
 当たり前のことをしただけなのに、お礼を言ってくださる神様なんですね」
 ロバは、『そういう神様だからこそ皆から拝まれるのだ』ということを悟りました。
「ぼくもそんなふうになりたいな」
 ロバは、あたたかな想いにつつまれながら、朝までぐっすり眠りました。

おしまい

福娘童話集バージョン

♪音声配信(html5)
亜姫の朗読☆ イソップ童話より

 ある人が、ロバの背中に神さまの像を乗せて町に連れて行きました。
 通りを歩いている人たちは、みんな神さまの像を拝みました。
 するとロバは、みんなが自分を拝むのだと思って大得意になり、大きな声でいなないて、先に進もうとしなくなりました。
 ロバ引きはロバが何を考えているのかを見抜いたので、こん棒で殴りつけながら言いました。
「何ておめでたい奴だ。人間さまがロバを拝むなんて事があってたまるか」

 自分は少しも偉くないのに、偉い人の名前を借りていばり散らす人は、正体を知っている人たちから笑い者にされるという事を、このお話は教えています。

おしまい

神さまの像をはこぶロバ

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