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2025年8月4日の新作昔話 うなぎのかぎ賃
むかし、ある町に、けちんぼうな男がいました。
男は毎日毎日ご飯どきになると、うなぎ屋の前へ出かけて行っては腹いっぱいにうなぎのにおいを吸い込み、
そのまま家へ飛んで帰ってうなぎのにおいでご飯を食べるのです。
「においだけで飯を食うとは、なんちゅうけちだ。
と、さっそく帳面(ちょうめん)につけておき、月末になると男の家ににおいのかぎ賃を取りに行きました。
「やい、おれはうなぎ屋に、借金をした覚えはないぞ!」
「いえいえ、これは、うなぎのかば焼のかぎ賃でございます。
えーと、しめて八百文(→二万四千円ほど)ですな。
においをかいでうなぎを食べたつもりになっておりますので、こちらも食わせたつもりで銭を取りに来ました」
うなぎ屋がすましていうと、男は仕方なくふところから八百文取り出しました。
うなぎ屋がにこにこ顔でお金を受け取ろうとすると、男はそれを板の間へ放り投げました。
チャリーン。
「においの代金は、音で払おう。 おしまい
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