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第 7話

テキシンとされこうべ

王様と九人の兄弟
中国の昔話(中国の少数民族・イ族に伝わる昔話)中国の情報

 昔々、中国の少数民族・イ族のある村に年寄りの夫婦が住んでいました。
 二人は「子供がほしい。子供がほしい。」と願っていましたが、すっかり腰が曲がっても、まだ子供は生まれません。
 とうとう子供が生まれないままお爺さんが亡くなってしまい、お婆さん一人だけになってしまいました。

  ある日の事、お婆さんはあんまり寂しいので、家の裏の池のほとりで一人泣いていました。
 そのお婆さんが流した涙の一滴が池に落ちました。
 すると、池の中から白い髪の仙人が現れて「なぜ泣くのじゃ?」とたずねました。
 お婆さんが泣いている理由を話すと仙人は「この丸薬をあげよう。一粒飲むと、子供が一人生まれる。」と、丸薬を 九粒くれました。

 お婆さんは家に帰ると早速一粒飲みましたが、一年経っても赤ん坊は生まれません。
 とうとうお婆さんは待ちきれなくなって、あるだけいっぺんに飲んでしまいました。
 すると、間もなくお婆さんのお腹が大きくなって、ある日突然、九人の赤ん坊を生みました。
 でもお婆さんにはとても、九人の赤ん坊など育てられません。
 お婆さんが再び家の裏の池で辛さの余り涙をこぼしていると、その涙の一滴が池に落ち、又、あの仙人が現れました。
 仙人は「心配はいらん。この子らはひとりでに立派に育つのだ。」と言って、名前を付けてくれました。
 その九人兄弟につけられた名前は“力持ち”“食いしん坊”“腹一杯”“長すね”“寒がり屋”“暑がり屋”“ぶってくれ”“切ってくれ”“水潜り”と言う変わったものでした。

 さて、この九人の兄弟はいっぺんに、顔も体つきもそっくりに大きくなりました。
 ちょうどその頃、都では大変な騒ぎが持ち上がりました。
 王様の宮殿の一番大きな龍の柱が突然、倒れてしまったのです。
 その柱が余りに大きく重いので誰も動かすことができず困っていました。
 そこで王様は、国中に『大きな龍の柱を元通りに直した者には、望み通りの褒美を取らせる。』と、おふれを出しました。
 この話は、九人の兄弟の家にも伝わってきました。
 そこで、兄弟たちは相談しました。
「どうする、褒美だってよ!」
「望み通りの褒美って、どういう事?」
「色んな物が貰えるってよ!」
「何たのんでもいいの?」
「どうしよう。誰が行く?」
「“力持ち”、行ってくれ!」
「よしきた!」
と、“力持ち”が返事をして出かけて行きました。
 丁度、夜中に“力持ち”は宮殿に着きました。
 そして、大きな龍の柱をひょいっと持ち上げ、元通りに直して帰っていきました。

 あくる朝になって、目を覚ました王様は「いったい、誰が直したのじゃ!?」と、驚きました。
 ところが、九人兄弟の一人が直したと聞いても、王様は信用しません。
 王様は、大きなお釜を幾つもすえてご飯を炊かせました。
 そして「もし、その様な力持ちならきっと、これ位の大飯が食えるはずじゃ。だが、食べられなければ、大嘘つきの罰として牢屋へぶち込め!」と命令しました。
 この話を聞くと、兄弟達は又相談しました。
「どうする、牢屋だってさ!」
「え、牢屋?そんな馬鹿な!」
「そんなわけにはいかないでしょ、こっちは直したのに。」
「どうしよう、どうしよう?」
「“食いしん坊”、行ってくれ!」
「よしきた!」
と、“食いしん坊”が返事をして出かけて行きました。
“食いしん坊”は宮殿に着くと、「ムシャムシャ、パクパク、おかわり!ムシャムシャ、パクパク、おかわり!」と、大きなお釜のご飯をペロリと全部平らげてしまいました。
 そして、「これきりじゃあ、とても足りない。もっと振る舞ってくれ。」と催促します。
 おかげで、宮殿の米蔵は、すっかり空っぽになってしまいました。
 王様はだんだん怖くなってきました。
「あんなに力持ちで大飯食らいの男なら、今にきっと、ワシを倒して、この国の王になるに違いない。何とかして、やっつけなければ…。」

 そこで王様は命令しました。
「奴を捕まえてきて、飢え死にさせよ!」
 これを聞いた兄弟たちは、驚きました。
「どういう事?飢え死にだってさ!」
「飢え死にって、飢えて死ぬ事?何言ってんの、あの王様!」
「どうする?どうする?」
「そうだな…。そうだ!」
「“腹一杯”、行ってくれ!」
「よしきた!」
と、返事をした“腹一杯”は王様の家来にわざと捕まえられました。
 王様は、“腹一杯”をすぐさま牢屋へ閉じ込めました。
 そして、七日七晩、何一つ食べさせませんでした。
 やがて八日目の朝が来ました。
 王様は「もう、あいつも飢え死にしてしまった事だろう。わっはっは。どれ…。」と笑いながら牢屋を開け「うわっ!」とビックリしました。
 なんと“腹一杯”は「あ〜あ、物を食べないおかげで、いい気持だった。」と、前よりももっと元気な様子で出てきたのです。

 王様はますます不安になりました。
 そして「そうだ。奴を高い山のてっぺんから突き落としてしまえ!」と命令しました。
 これを聞いた兄弟達は、又、相談します。
「高い所ってどういう事?」
「高さって事?値段じゃなくて?」
「高い所だったら、いける!」
「じゃあ、お前行こうか!」
「“長すね”、行ってくれ!」
「よしきた!」
と“長すね”は返事をして、王様の所へ行きました。
“長すね”は、すぐさま岩山のてっぺんに連れていかれました。
 そして、切り立った崖の上から、どんと突き飛ばされました。
 その時です。
“長すね”のすねが、しゅうっと伸びて谷底まで届いてしまったのは…!
 こうして、王様は又失敗しました。

 王様は怖くて、怖くて、全く眠れません。
 これはもう、何としてでもこの男をやっつけなければ…と考えました。
 そこで「奴を火の中へぶち込んで焼き殺してしまえ!」と王様が命令しました。
 するとやってきたのは“寒がり屋”。
 炎の中で燃やされますが、“寒がり屋”は「ああ、あったかくていい気持ち!」と嬉しそうです。
 とうとう薪が全部燃え尽きてしまいました。
「ならば、奴を雪の中に埋めて凍え死にさせよ!」
と王様が命令しますと、やってきたのは“暑がり屋”。
 雪の中に埋められますが、“暑がり屋”は「ああ、冷たくていい気持ち!」とニコニコしています。
 とうとう雪が解けだしてしまいました。
「ならば、奴を棍棒で打ち殺せ!」
と王様が命令しますと、やってきたのは“ぶってくれ”。
 棍棒でぶたれますが“ぶってくれ”は「ああ、いい気持ちだ。ぶってくれ、ぶってくれ!」と気持ちよさそうです。
 とうとう棍棒は折れてしまいました。
「ならば、奴を切り殺せ!」
と王様が命令しますと、やってきたのは“切ってくれ”。
 刀や剣で切られますが、“切ってくれ”は「ああ、いい気持ちだ。切ってくれ、切ってくれ!」と平気そうです。
 とうとう刀や剣はボロボロになってしまいました。
 兄弟たちの前に、王様の計画はことごとく失敗します。

 とうとう王様は、カンカンになって「奴をひっ捕らえて、大きな川へ放り込んでしまえ!」と命令しました。
 すると兄弟達は、又相談しました。
 そして
「“水潜り”、行ってくれ!」
「よしきた!」
と、返事をした “水潜り”は王様の所へ行きました。
“水潜り”は川に落とされると、まるで魚の様にス〜イ、ス〜イと、泳ぎ回ります。
 そして、口いっぱいに川の水を含んだかと思うとそれを、「ぷぅーっ!」と、王様や宮殿に吹きかけました。
 すると…、王様は「あわわわ…うわ〜っ!」と悲鳴を上げながら宮殿もろとも水の力で飛んで行ってしまいました。

 この日から、人々は王様からひどい仕打ちを受ける事も無く、楽しく平和に暮らしたということです。

おしまい

この物語は、福娘童話集の読者 山本様からの投稿作品です。

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