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第 8話

タコとしゃれこうべ

タコとしゃれこうべ
千葉県の民話千葉県情報

 むかしむかし、ある漁師町(りょうしまち)に、代々漁師をしている庄五郎(しょうごろう)という男がいました。

 今日は庄五郎の父親の命日(めいにち)ですが、庄五郎は貧しい暮らしをしているので、一日も漁を休む事が出来ません。
 そこで庄五郎は弟や仲間たちと、沖へ舟を出して魚を取っていました。

「今日は、ずいぶんと調子がいいな」
 久しぶりの大漁に、みんなはニコニコ顔です。
 そして庄五郎の弟たちが乗っている舟がアミを引き上げていると、一匹の大きなタコが、なんと人間のしゃれこうべ(→ドクロ)を頭の上に乗せながら現れたのです。
「うへぇー!」
 漁師たちはビックリして、誰もタコを取ろうとはしません。
「おーい。どうした? 何があったんじゃ?」
 向こうの舟でアミを引き上げていた庄五郎が、声をかけてきました。
 その時です。
 庄五郎たちが引き上げているアミの中にも、しゃれこうべを頭に乗せたタコがかかったのです。
「なんという事じゃ。海の中から、しゃれこうべが二つも出てくるとは」
 漁師の一人が言うと、庄五郎が、
「そういえば、今日は親父の命日じゃ。これは、なにか因縁(いんねん)があるかもしれんぞ」
と、しゃれこうべとタコをアミから取り上げました。

 その後、タコは他の魚と一緒に売ってしまい、二つのしゃれこうべは庄五郎の父親がほうむられているお寺へ持って行って手厚く供養(くよう)をしてもらいました。

 この話を聞いた町の人たちは、
「それにしても、しゃれこうべを乗せていたタコをなぜ売ったんじゃ? 海に逃がしてやれば父親のいい供養になったものを」
「そうだな。しかしそれにしても、どうしてタコがしゃれこうべを乗せて現れたんじゃろう?」
「さあな。どちらにせよ、たたりがなければ良いが」
と、うわさをしました。

 タコを売った庄五郎たちには、その後たたりの様な事はありませんでしたが、しゃれこうべがあがった漁場は、それから魚が全く取れなくなったそうです。

おしまい

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