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福娘童話集 > きょうの百物語 > その他の百物語 >魂を抜かれた坊さんたち
第 13話
魂を抜かれた坊さんたち
むかしむかし、ある侍が、お寺の庭で切腹をさせられました。
侍のなきがらは立派な棺におさめられて、一晩、本堂に置かれる事になりました。
やがて本堂に一番偉い坊さんがやって来ると、棺に手を合わせて言いました。
「まさか、こんな事になるとは思わなかった。まあ、これもあんたの運命、迷わずにあの世へ行ってください」
実は侍は、この坊さんが言った悪口が原因で、殿さまに切腹させられたのです。
坊さんは弟子の坊さんたちと二人の小坊主と一緒に、棺を囲んで夜通し見守る事にしました。
その夜更け、棺を見守っていた十人あまりの坊さんたちが、座ったままで急に居眠りをはじめました。
見守っている棺の前で、十人あまりの坊さんたちが居眠りをするなんて、ただごとではありません。
何とか二人の小坊主が眠いのをがまんして起きていると、棺がガタガタとゆれだしました。
「ひぇーーっ!」
二人の小坊主が腰を抜かしていると、棺のふたがゆっくりと開いて中から切腹した侍が出てきたのです。
侍はうらみでつりあがった目で坊さんたちをにらみまわしてから、ろうそくのあかりの火を、こよりひもにとりました。
そして一番偉い坊さんから順に火のついたこよりひもを鼻の穴に押し入れて、鼻の穴から坊さんたちの魂を抜き取っていったのです。
魂を抜き取られた坊さんたちはバタリと倒れて、次々と死んでいきます。
もうすぐ、二人の小坊主の晩です。
二人の小坊主は、恐ろしさのあまり声も出ません。
でも何とか力をふりしぼって廊下に逃げ出すと、寺男たちに助けを求めました。
「なに! 棺の死体が生き返っただと!」
寺男たちが駆けつけてみると、棺には何の変わりもありません。
侍のなきがらは、ちゃんと棺におさまっています。
けれど倒れていた坊さんたちは、一人残らず死んでいたという事です。
おしまい
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