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第 21話
キジ娘
むかしむかし、子どものいない老夫婦が近くの明神(みょうじん)さまへ丑の刻参り(うしのこくまいり)をして願をかけました。
「お願いです。ヘビでも鬼でもよいので、どうか子どもを授けて下さい」
その祈りが届いたか、白い小さなコサの花(→イケマの花)が丸く輪になって咲きそろった夢を見た夜に、おばあさんは念願の子どもを身ごもったのです。
「おお、ついに子どもを授かったぞ!」
老夫婦は大喜びですが、ただ、コサの花は根に毒を持つ不吉の花とされていたのが気がかりでしたが。
やがて生まれたのは花の様に可愛い女の子で、夢に見たコサの花の名をとって『こさん』と名付けられました。
年頃になった美しいこさんは、多くの縁談(えんだん)の中から隣村の美しい若者を婿にしました。
その美しい夫婦は、村中の評判でした。
そんなある日、おばあさんは夫の顔が病人の様に青冷めている事に気づきました。
「どこか具合でも悪いのですか?」
心配したおばあさんが夫に尋ねると、夫は恐ろしさに身を震わせながらもわけを話してくれました。
「実は、こさんが毎夜家を抜け出すので、こっそり後をつけたところ、こさんが墓場から死人を掘り出して食べていたのです」
「まさか、こさんに限って、そんな事は」
でも夫の顔は、嘘を言っているようには見えません。
「わかった、わたしも確かめてみるよ」
その夜、おばあさんと夫は、家を抜け出したこさんの後をそーっとつけていきました。
そんな事とは知らないこさんは、暗い夜道をすたすたと歩きながら墓場へと向かいました。
そして、ほうむられたばかりの死人を掘り出して、その死人の肉をバリバリと食べ始めたのです。
あまりのむごさに、おばあさんは物陰から飛び出して叫びました。
「お前、そこで何をしているんだい!」
すると、こさんは蒼白な顔で立ちつくし、やがておばあさんと夫に言いました。
「こんな姿を見られたからには、夫婦親子の縁もこれまでです。今まで育てていただき、ありがとうございました」
そしてこさんは一羽の鳥になって、空高く飛んでいきました。
こさんは、キジの化身だったのです。
おしまい
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